- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2013/12/20
- メディア: 単行本
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『千葉日報』など22紙に2010年9月12日〜2013年10月3日の期間、順次掲載。加筆修正のうえ、2013年12月、単行本刊行。
『誰か』『名もなき毒』に続く杉村三郎シリーズ長編3作目。老人がバスジャックし、3人の人物を連れてくるように要求するも、警察の突入と拳銃の暴発で犯人が死亡し、3時間で事件は解決。ところが事件後、老人から迷惑料が贈られてきたため、受け取るべきかどうか、杉村達元人質たちは悩む。
何とも長い作品。場面の転換や話の切り替えがうまいので厚さはそれほど感じないが、それでも読んでいて重くなってくる。肉体的にも、精神的にも。
バスジャックをめぐる背景については、ああ、日本人って(自分も含めて)こうだよな、と思わせるもの。もちろん日本人だけには限らないが、この手の話は日本が一番多いような気がする。別に海外の事例を確認せず、報道量だけで判断したものだから、全然違うかもしれないけれど。世の中、こんなにうまくいく話があるわけでもないのに、なぜ騙されるのだろうと思ってしまうのだが、そこがコントロールなんだろうなあ。
問題は杉村の家のこと。多分最初からこの流れを想定してシリーズを書いていたのだろうけれど、こればっかりはやってほしくなかったな。むしろこのシリーズでやってしまってはいけなかったと思う。それが多くの読者の本音ではないだろうか。
なぜハッピーエンドで終わらないのだろう。そう、疑問を持ってしまうことが時々ある。それが次につながる話だとしても。宮部みゆきで時々首をひねるのはそういう点だが、それがまた現実を突き付けているようで、やりきれない。