- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2000/06/01
- メディア: 単行本
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細谷忠夫はクラブのホステス、長井清美と交際していた。清美はフリースポーツライターの小杉浩一につきまとわれており、友人である細谷は止めさせようと部屋に電話するも本人はおらず、共通の友人である山下恒彦が小杉の依頼で猫の世話を含む留守番をしていた。山下に誘われ、細谷は小杉の部屋で飲み明かすこととする。深夜、細谷は窓の外から清美の姿を見かける。びっくりした細谷は清美の携帯電話に掛けるも、つながらない。実は清美は同時刻、小杉に殺害されていた。細谷が見たのは幽霊だったのか。「第二章・霊視る(みえる)」。
草薙は、姉の森下百合からの依頼で、友人の妹である神崎弥生の夫・俊之が5日前から行方不明となっている話を聞く。俊之が通っていた高野ヒデの家を弥生が訪ねてみると、ヒデは病死し、甥夫婦と他の夫婦が共同で生活していた。草薙自身は動くことができないため、弥生が高野家を見張っていると、二組の夫婦は毎日午後8時に家を出ていることがわかった。再度の弥生の依頼で、草薙が高野家から出てきた二組の夫婦を尾行するも、何事もなく家に帰ってきた。一方、家を見張っていた弥生は、家の中から物音が聞こえると話した。草薙たちは翌日、夜8時に家へ無断で入り込むと、部屋の中が振動し始めた。「第三章・騒霊ぐ(さわぐ)」。
ヤジマ工業の社長である矢島忠昭は、ホテルで死体となって発見された。事件当日、矢島は以前に貸した金を返してもらえると家を出ていた。紐の絞め跡があったことから絞殺とみて捜査を始めるも、工場が火の車で、しかもここ数ヶ月で多数の生命保険に入っていたことから、草薙は妻の矢島貴子の犯行ではないかと疑う。貴子は死亡時刻の前後にこそアリバイはあったが、死亡時刻近辺のアリバイはなかった。「第四章・絞殺る(しめる)」。
広告代理店に勤める瀬戸富由子は、不倫相手の菅原直樹の向いにあるマンションの、直樹の部屋の向かいに引っ越していた。妻の静子と別れる気配のない直樹に業を煮やした富由子はその夜、直樹に電話を掛け、別れなければ覚悟があると言い残し、自分の部屋でパイプハンガーから首を吊って自殺した。遊びに来ていた後輩の峰村英和も、それを目撃していた。不倫のもつれによる自殺と思われたが、菅原家の隣に住む少女が、2日前の深夜にも富由子が首を吊るのを見て気を失ったが、翌日には富由子が話をしていたと語った。少女は富由子の自殺を予言していたのか。「第五章・予知る(しる)」。
『オール讀物』1999年〜2000年掲載。2000年6月、単行本刊行。
『探偵ガリレオ』は読んでいたが、こちらは読んでいなかったなと思い手に取った。湯川が科学知識を用いて事件の不可解な現象を解き明かす(科学とは違う話もあるが……)のは、前作と変わらない。
ただ、後の作品と違うのは、不可解な事件を解き明かして終わってしまうところだ。ある意味、機械的に事件を解決するばかりであり、その後の余韻が何もない。そのためどれも似たような話となっており、読んでいる時はまあまあ面白く、トリックに驚嘆しても、それだけ、という結果になっている。湯川や草薙に人間味が感じられないところが、物語を無味乾燥なものにしている。「第三章・騒霊ぐ(さわぐ)」などは、後日談をもうちょっと書くだけで、もっと余韻残る話になると思うのだが。それに近いことをしているのは、「第五章・予知る(しる)」である。
面白いんだけどねえ、という頃の東野圭吾の作品、と言えるだろう。達者なのだが、何か一つ足りない。