平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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三上延『ビブリア古書堂の事件手帖2 栞子さんと謎めく日常』(メディアワークス文庫)

鎌倉の片隅にひっそりと佇むビブリア古書堂。その美しい女店主が帰ってきた。だが、入院以前とは勝手が違うよう。店内で古書と悪戦苦闘する無骨な青年の存在に、戸惑いつつもひそかに目を細めるのだった。変わらないことも一つある――それは持ち主の秘密を抱えて持ち込まれる本。まるで吸い寄せられるかのように舞い込んでくる古書には、人の秘密、そして想いがこもっている。青年とともに彼女はそれをあるときは鋭く、あるときは優しく紐解いていき――。(粗筋紹介より引用)

2011年10月、書き下ろし刊行。



「プロローグ 坂口三千代『クラクラ日記』(文藝春秋)I」「第一話 アントイ・バージェス『時計じかけのオレンジ』(ハヤカワNV文庫)」「第二話 福田定一『名言随筆 サラリーマン』(六月社)」「第三話 足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦』(鶴書房)」「エピローグ 坂口三千代『クラクラ日記』(文芸春秋社)II」を収録。

栞子が退院し、舞台は完全にビブリア古書堂へ移る。そして栞子の母親の謎に迫る話となり、シリーズの中核が定まっていく。

相変わらずの蘊蓄は読めるのだが、『UTOPIA 最後の世界大戦』みたいに自分の知っている話となると、かなり退屈になることを今知った。逆に『時計じかけのオレンジ』のようにタイトルこそ知っているが、中身を知らない作品だと結構興味深く読めた。そう考えると、ラノベの読者層を考えたら、あまり読まれない本をターゲットにしているのだろうなあ、という作戦は見えてくる。別に悪いというつもりはないが。

謎としては可も無く不可も無くと言ったところ。推理についてはかなり強引。二人の関係は名前呼びに変わったが、それ以上の進展は無し。それにしても、栞子と文香の母親である篠川智恵子って黒いねえ。第三話なんか、腹立たしくなったよ。

『クラクラ日記』の件については、あまりにも無謀すぎ。本がどれだけ流通しているのか、古本屋商売なら知っているだろうに。
軽いからさくさく読めるけれど、それだけ。いや、もう少しサービスシーンぐらい作る気はないのか、作者は。