- 作者: 矢部嵩
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2008/09/25
- メディア: 文庫
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2006年、第13回日本ホラー小説大賞長編賞受賞。同年11月、単行本刊行。2008年9月、文庫化。
応募時、作者は武蔵野大学在学中。ページ数は160ページ。長編賞を受賞してはいるものの、どちらかと言えば中編と言ってよい長さである。もちろん、小説の出来に長さは関係ないが。
ということで薄いからあっと言う間に読み終えたのだが、文章が下手なのはさておいて(問題だらけだけど)、中身は首をひねることばかりでさっぱりわからなかった。祖母(父親から見たら母親)が死んで数ヶ月経ってようやく連絡をもらう時点でおかしい。従姉が行方不明になっているのに両親が平然としていたら少しは脅えろよと言いたいし、殺されるかも知れないのにまだ泊まろうとしているのも不思議。バラバラ死体を見つけたら逃げ出せよ。電話に出た刑事も意味不明。食事に虫が入っていたら、食欲なんて失せるだろう。
この作品にストーリーを求めちゃいけないし、内容に突っ込みを入れても無意味である。登場人物が皆異常なのだから。ただ、世界観を全く作れないまま物語が終わってしまうのでは小説として問題。異常なら異常なりの納得できる小説世界を作者が作れなければ、ただの落書きである。グロテスクな場面を継ぎ接ぎするだけでは、何も面白くないのだ。それもグロテスクなだけで、恐怖感は全く伝わってこないし。腐った指を口の中に隠すというのは本来ならショッキングな内容であるはずなのに、読んでいても何とも思えないというのは、ある意味凄い書き方である(当然褒め言葉ではない)。
文章も問題だらけ。小学生が主人公だからといって、中身を低レベルの小学生のような稚拙な文章にする必要はない。いきなり漢字の全てにふりがなが付いたり、句読点がなくなったり、効果的ではない擬音語を使ったり。
文章もダメ、世界観もダメ。内容は全く理解できない。なぜこれが受賞できたのか、選評を読んでもさっぱりわからない。昔の同人誌を思い出しますね、自分の気に入った場面だけを延々と描き続けるような作品を。