平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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櫻沢順『ブルキナ・ファソの夜』(角川ホラー文庫)

ブルキナ・ファソの夜 (角川ホラー文庫)

ブルキナ・ファソの夜 (角川ホラー文庫)

大手旅行代理店に勤務し、マニア向け少人数ツアーの企画をしている男。彼はツアーのネタになる珍しい場所や物を探して、世界中を飛び回っていた。そんなある日、飛行機の給油のために着陸した西アフリカの小国ブルキナ・ファソで、彼は一夜の不思議な出来事を経験する――。

普通の「旅行(ツアー)」に飽き足らない人に贈る、儚く美しいファンタジック・ホラー。(粗筋紹介より引用)
1996年、第3回日本ホラー小説大賞短編賞佳作受賞。加筆修正のうえ、書下ろし「ストーリー・バー」を収録し、2002年1月刊行。



1996年に受賞しながら、2002年まで出版されてなかった理由は不明。単に仕事が忙しくて加筆修正が追い付かなかったのか、それともしばらく編集部で寝かされていたのか。

表題作は、旅行代理店の男が体験する不思議譚。知らなかったが、ブルキナ・ファソは実在する国である。ホラーというよりファンタジーと言った方が正しい内容であるが、読みごたえはある。ただ、前半の説明調が惜しい。オチも弱い。特殊なツアーの内容をいくつも並べるより、不思議譚の方をもうちょっと詳しく書けなかっただろうか。

「ストーリー・バー」は、都内某所にある会員制のバーが舞台。ホステスならぬストーリー・テラーが、客に不思議な物語を語るという設定。会社仲間のアダチに紹介してもらったが、そのアダチが失踪。ある日、お気に入りのテラーであるユリエを指名すると、ユリエはアダチから聞いたというインドの古城の奇妙な話を語る。主人公は、バーが入っているビルの中庭で、不思議な情景の中にアダチがいるのを見かける。

これも不思議な話をいくつか組み合わせ、一本のストーリーとして仕上げている。長編ならともかく、短編でこのような構成は内容が散漫になりがち。バーの設定で十分短編に仕立て上げられるのだから、最初のサファリの話はいらなかったのではないか。

出来るのなら、もうちょっと長い作品を読んでみたかった気がする。あっさりしすぎで今一つだった。