平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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道尾秀介『背の眼』上下(幻冬舎文庫)

背の眼〈上〉 (幻冬舎文庫)

背の眼〈上〉 (幻冬舎文庫)

背の眼〈下〉 (幻冬舎文庫)

背の眼〈下〉 (幻冬舎文庫)

児童失踪事件が続く白峠村で、作家の道尾が聞いた霊の声。彼は恐怖に駆られ、霊現象探求所を営む真備のもとを訪れる。そこで目にしたのは、被写体の背中に人間の眼が写り込む、同村周辺で撮影された4枚の心霊写真だった。しかも、彼ら全員が撮影後数日以内に自殺したという。これは単なる偶然か?第5回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞作。(上巻粗筋より引用)

「ゴビラサ…」道尾の前で謎の言葉を呟いた男は、数日後に刺殺体で発見された。やがて、彼の残した言葉と度重なる霊現象が結びついた時、孤独な少年の死に端を発した一連の事件にまつわる驚愕の真実が明らかになる。美貌の助手を伴う怜悧な霊現象探求家・真備と、売れないホラー作家・道尾のコンビが難事件に挑む。(下巻粗筋より引用)

2004年、第5回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞。2005年1月、幻冬舎より単行本で刊行。2006年1月、幻冬舎よりノベルス化。2007年10月、上下巻で幻冬舎より文庫化。



本格ミステリ大賞日本推理作家協会賞大藪春彦賞山本周五郎賞直木賞を立て続けに受賞し、現在も一線で活躍する作者のデビュー作。ホラー作家の道尾秀介と霊現象探求所を構える真備庄介が活躍するシリーズ(といっても長編2作と短編集1作しかないけれど)の初登場作品でもある。

解説の中のインタビューにもあるけれど、「最終的に本格の仕掛けで落とすホラー長編」という趣向。そういう意味での仕掛けとしては見事に成功していると言わざるを得ない。ホラー小説ファンからしたらがっかりするところがあるかもしれないが。まだまだ怖くできる要素はあったと思う。

応募時1200枚あった原稿が900枚に切り詰められているとのことだが、道尾と真備の会話がやや冗長という感があることは否めない。今だったらもっと刈り込むか、逆にもう一つ二つアイディアを入れていたような気がする。

なんでこれが特別賞なんだろうと思ったら、大賞は沼田まほかるか。小説としての面白さなら道尾の方が上だったが、賞のコンセプトを考えると特別賞で終わったのも仕方がないか。