平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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木犀あこ『奇奇奇譚編集部 ホラー作家はおばけが怖い』(角川ホラー文庫)

 霊の見える新人ホラー作家の熊野(ゆや)惣介(そうすけ)は、怪奇小説雑誌『奇奇奇譚』の編集者・善知鳥(うとう)とともに、新作のネタを探していた。心霊スポットを取材するなかで、姿はさまざまだが、同じ不気味な音を発する霊と立て続けに遭遇する。共通点を調べるうち、ふたりはある人物にたどり着く。霊たちはいったい何を伝えようとしているのか?

 怖がり作家と最恐編集者のコンビが怪音声の謎に挑む、第24回日本ホラー小説大賞・優秀賞受賞作! (粗筋紹介より引用)

 応募時タイトル「文字列の幽霊」。「幽霊のコンテクスト」と改題し、加筆修正。さらに書き下ろし「逆さ霊の怪」を収録。2017年9月、刊行。



 作者は2014年に橘雨璃名義でジャンプ小説新人賞'14Springキャラクター小説部門銀賞を受賞し、『放課後の魔女』(JUMP j BOOKS)でデビューしている。主人公熊野惣介も二作目が出せなくて苦労しているが、作者自身を投影しているのだな、と思わせる。

 タイトルを変えること自体は賛成だが、この本のタイトルは無いだろう。本当に応募時から雑誌のタイトルは『奇奇奇譚』だったのか。あまりにもチープだ。

 売れない新人ホラー作家と編集者のやり取りはまあ楽しめるのだが、そのせいでホラーっぽさが消えてしまっている。表紙も含め、どことなくライトノベルっぽい仕上がりは、ここ数年の流れを意識したものだろうか。しかも霊の正体というのがこれでは、セルフパロディなのだろうかと思ってしまうぐらいだ。

 書き下ろしは本作の前日譚。もうちょっとページがあってもよかっただろうに。

 どうせ売れ線を目指すなら、女性作家にしてしまえばよかったのに。それとも、男同士の方がトレンドなのか。そこらへんはよくわからないが、なんにせよ、無理やりホラーを書かなくてもいいのに、とは思った。