平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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織守きょうや『記憶屋』(角川ホラー文庫)

記憶屋 (角川ホラー文庫)

記憶屋 (角川ホラー文庫)

大学生の遼一は、想いを寄せる先輩・杏子の夜道恐怖症を一緒に治そうとしていた。だが杏子は、忘れたい記憶を消してくれるという都市伝説の怪人「記憶屋」を探しに行き、トラウマとともに遼一のことも忘れてしまう。記憶屋など存在しないと思う遼一。しかし他にも不自然に記憶を失った人がいると知り、真相を探り始めるが……。記憶を消すことは悪なのか正義なのか? 泣けるほど切ない、第22回日本ホラー小説大賞・読者賞受賞作。(粗筋紹介より引用)

2015年、第22回日本ホラー小説大賞・読者賞受賞。改稿の上、2015年10月、角川ホラー文庫より刊行。



表紙のイラストがいかにも今時の売れ線を真似ていたため、ヒットしていると知っていてもなんとなく手に取る気にならなかったのだが、読んでみてちょっと後悔。もっと早く読んでもよかった。読み終わってみると、このイラストで正解だったとも思った。

ジャンルとしてはセンチメタル系ホラーか。確かに「記憶屋」という都市伝説のような人物を登場させ、記憶を消すというのはホラーと言えなくもないが、内容は記憶を消すことの是非を問うた結構重い作品。登場人物に女子高生とか大学生が出てくるせいもあってか、読み始めた当初はそんなに重い雰囲気になるとは思わなかった。文体は非常に読みやすいけれど、読み終わってみると哀しくなってくる。何が正しいか、わからないまま……。

これは近年のホラー大賞でも上位に位置する作品(といっても、最近のはあまり読んでいないけれど)。大賞作品を読んでいないし、改稿前がどうだったかも知らないので、これがどうして読者賞止まりだったのかはわからないが、表紙のイラストに惑わされず読んでみた方がいいよとおススメできる一冊。意外な拾い物だった。続編が作られているのも納得である。