- 作者: 沙藤一樹
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1997/06
- メディア: 単行本
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1997年、第4回日本ホラー小説大賞短編賞受賞。同年6月、ハードカバーで刊行。
あまりにも薄いのでまさかと思ったけれど、本当に短編1本だけだった。再開発計画のために会議室へ集まった人々の前で再生されるテープ。カセットテープから流れる少年の独白が進み、所々で人々のおしゃべりが入る形式になっている。
D‐ブリッジに不法投棄されたゴミの中に捨てられた子供。足を一本失いながらも、虫などを捕まえて必死に生き延びる日々。数年経った頃、盲目の少女、エリハが捨てられた。必死に生きる二人。
誰からも見放された世界で、二人が必死に生き延びようとする姿はわかる。ただ、首をひねる部分も多い。問題は、橋の外がどのような世界か、今一つわからないこと。橋の外で見つけてもらえば、最低でも保護してもらえるのではないだろうか。橋の外の方が食べ物はいっぱいあることだって、いくら小さくてもわかるだろう……なんて考えてしまうのだ。逆に日常的に子供が捨てられているのなら、死体がもっとあるか、ストリート集団みたいなものが結成されているだろうし。自分の腕を切り落として、愛する人に食べさせるというのはよくある話で、それほど珍しいものではない。手塚治虫や清水玲子にもある。
ホラーの部分は、動物や虫を食ったり、身体がが虫に食われたりするところのグロテスクな描写が該当するのかな。うーん、まあ、生き延びようとする描写に妙な迫力があるのは事実。それだけに、背景が今一つわからず、すっきりしない作品になっているのが非常に残念だったりする。テープを聴かせる相原の動機もあやふやだし。もやもやが残る作品でしかなかった。