平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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レオ・ブルース『三人の名探偵のための事件』(新樹社)

三人の名探偵のための事件

三人の名探偵のための事件

医師であるアリグザンダー・サーストンの屋敷で開かれたウィークエンド・パーティー。その夜、先に床についたアリグザンダーの若い妻、メアリーの悲鳴が聞こえてきた。アリグザンダーや客たちが駆けつけると、二階の部屋には鍵がかかっていた。鍵を壊して中にはいると、そこにいたのは首を切られたメアリーの姿が。窓こそ開いていたものの、部屋には誰もいなかった。これは密室殺人か。

村の警官であるウィリアム・ビーフ巡査長が捜査を始めるが、どこからともなく現れてきたのが三人の名探偵。執事まで連れてきた貴族探偵ロード・サイモン・プリムソル、フランス人の私立探偵ムッシュー・アメ・ビコン、神父探偵スミス師。三人の名探偵はビーフ巡査長の迷惑顔も省みず独自に調査をはじめ、そして犯人にたどり着く。結末であかされる意外な真相は。

1936年発表。小説、詩などの文学作品、心理学、料理などの専門書、実用書を書き続けたルパート・クロフト・クックが、レオ・ブルース名義で書いたミステリ処女作。1998年翻訳。



新刊で買って、半分くらいまで読んだまま放置していたものを改めて最初から読み始めた。ピーター卿、ポアロ、ブラウン神父を模した名探偵たちが難解な事件に取り組むという姿は、割とよくあるパターン。通常なら一人で快刀乱麻の解決を披露するはずの名探偵が、複数でよってたかって解き明かそうとするのは、パロディとはいえ名探偵の立場を低くしようとしている気分がするので、今ひとつ好きになれないところもある。昔は好きだったのだが。物語そのものはスムーズに進むし、謎解きは面白いので、作者の構成力が高いという点では楽しめる。

最後の推理合戦は楽しいけれど、名探偵に対する強烈な皮肉というほどのものも感じられない。それに関しては、次作以降も読んでみれば、作者のミステリに関する考え方がわかるかもしれない。

ということで、買ったまま積んでいる『ロープとリングの事件』も読んだ方がよさそう。



くだらないネタばれ話は以下。


どうでもいいが、誰が犯人を見つけたかを書いたり、○○シリーズと書くのは、ネタばれに近いんじゃないか?