
- 作者: 平石貴樹
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2014/10/08
- メディア: Kindle版
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2013年9月、文庫書下ろし刊行。
『笑ってジグソー、殺してパズル』などの更科丹希(ニッキ)シリーズなどで知られる作者が、東大教授を退官して作家専業となった第一作。捜査中に俳句をひねるためマッタリさんと呼ばれる松谷健介警部が登場。どこにも書いていないけれど、所属はやはり本庁か? 探偵役は目黒本町署刑事課の白石以愛巡査。松谷警部は、20年ほど前にいっしょに仕事をした女の子を思い出すそうだ。
ということで久しぶりに平石作品を読んでみたのだが、何とも地味。殺人事件が起き、関係者にはアリバイがあるものの不審な過去の事件が浮かび上がってきて、という展開なのだが、登場人物が多く出て来るのに整理できておらず、造形があまり描かれていないこともあり、誰が誰なんだがわかりにくい。またこれらの登場人物が全然感情移入できないのにも困ったものだ。誰が犯人でもいいやと思わせるのは、本格ミステリとしてもあまり好ましいものではない。
過去を洗って不審な点を洗い出し、動機が見つからないけれど捜査を進め、やっと犯人を見つけ出す。一応ロジックには面白い点があるものの、ただあっ、そう、という程度のものでしかない。最近、こういうものにゾクゾクしなくなったね。惰性で読んでしまう。動機についても、最後でこんなことを言われても理解しがたい、としか言いようがない。
とりあえず本格ミステリを読めればいい、という読者にはいいかもしれない。ただ盛り上がりもなく、淡々と進んで終わってしまう。もうちょっとドラマとカタルシスが欲しかった。