- 作者: 石崎幸二
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/08/07
- メディア: 新書
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女子高生ミリア&ユリシリーズ最新刊、書き下ろし。
前作『袋綴じ事件』から6年ぶりになるミリア&ユリシリーズ。しかし作中では、3週間しか経っていないというギャップに大笑い。しかもそのことをしっかりネタにするあたりはさすが石崎というべきか。ただ、自虐ネタと内輪ネタを多用しすぎているのはどうかとも思うが。どうでもいいが、斉藤瞳刑事って誰だっけ?
裏表紙にある紹介文だけを読むと、深刻そうな話に見えるが、それが全く感じられないというのはもはや芸と言ってよいのだろうか。孤島で1日の間に続けて殺人事件が、しかも顔が焼かれているという残酷な事件が起きているのに、緊迫感も何もありゃしない。まあ、それがこのシリーズのいいところなのだろう(誉め言葉、一応)。
使われているトリックは結構大掛かりだが、本格ミステリ慣れしている人なら、ある程度真相にたどり着くものと思われる。ついでにトリックが見破られるところまでも含めて。手がかりの提示など、書き方があからさまではあるが、これぐらいのページ数ならじれったさは感じない。ミリア&ユリや石崎幸二といったキャラクターに惑わされがちだけど、骨格や構成そのものは本格ミステリの定式通りなので、謎解きを楽しみたいという人にとってはそれなりに満足できるものだろう。
まあ、普通に会社に勤務しているのなら、いくら独身とはいっても執筆に時間を割くのは難しいだろうから、刊行間隔が延びていくのは仕方ないのだろうが、このシリーズのファンとしては、できれば1年に1作ぐらいは書いてほしいところである。
どうでもいいけれど、個人的にはこのシリーズを2時間ドラマで見てみたい。ミリア&ユリを演じることができるのは誰だろう。
以下は野暮すぎるネタバレ突っ込み。
今回のトリックが体力的・物理的に実現可能かどうかは別問題としても、以下の一点だけはちゃんと計算されていたのかどうか聞いてみたいところ。
「犯人」が「自白」しているのだから、証拠はないとしても10年前の殺人事件は被疑者死亡として書類送検されることになると思う。となると、書類を作るためにも補充捜査は行われるはず。今回は、容疑者としてあがっていなかった5人を送検することになるのだから、5人が10年前に交友関係があったかどうかぐらいは調べると思うのだが、その辺を真犯人は考慮していたのかな。1人が10年前、物理的に有り得ないような場所に住んでいたらどうするのだろう、とか考えてしまうけれどね、私は。書類送検される側の家族だって寝耳に水の話だろうから、色々と警察に訴えるだろうし。送検されなくても、報道で10年前の事件の加害者なんて書かれたら無罪を訴えるはずなのだが、どうだろう。