平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

早坂吝『○○○○○○○○殺人事件』(講談社ノベルス)

○○○○○○○○殺人事件 (講談社ノベルス)

○○○○○○○○殺人事件 (講談社ノベルス)

アウトドアが趣味の公務員・沖らは、フリーライター・成瀬のブログで知り合い、仮面の男・黒沼が所有する孤島で毎年オフ会を行っていた。沖は、今年こそ大学院生・渚と両想いになりたいと思っていたが、成瀬が若い恋人を勝手に連れて来るなど波乱の予感。孤島に着いた翌朝、参加者の二人が失踪、続いて殺人事件が! さらには意図不明の密室が連続し……。果たして犯人は? そしてこの作品のタイトルとは?(※真相とタイトルが分かっても、決して人には話さないで下さい)(粗筋紹介より引用)

2014年、第50回メフィスト賞受賞。同年9月、講談社よりノベルス刊行。



「前代未聞」かどうかは知らないが(昔あったような気もするし……)、ここまで堂々とタイトル当てを表題に持ってきたのは初めてではないか。そのこと自体は評価してもよいと思う。

こういうケースだと大体が叙述トリックを使い、何らかの「事実」を隠しているのだろうと思いながら読んでいたが、残念ながら見破ることができなかった。海に行くシーンで本来描写されるべき記述がなかったことなど、不審な点はいくつもあったのに、気づくことができなかったというのは無念である。

テンポもよいし、短いしで、快調にページは進むのだが、事件とトリック自体はつまらないもの。途中で「神の視点」が挿話として挟まれるけれど、何のためにあるのだか。本格ミステリへの皮肉なんだろうか。

何と評価したらよいかわからないが、まあ、こういう本格ミステリもあるよ、と言う意味でだけならありだろう。二作目もこれじゃ、やってられないだろうが。アイディア一発物としてみれば、完成度は高い作品。バカバカしいけれど。