- 作者: 柳原慧
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2005/01/15
- メディア: 文庫
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2004年、第2回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。
身代金を奪わずに現金をせしめる誘拐劇。これだけなら手段の差こそあれ、過去の作品にも前例がある。この作品の凄いところは、代理母、幼児虐待、老人介護、オンライントレード、ES細胞、美容整形などといった現代社会を代表するような素材をこれでもかとばかりに押し詰め、それでいて素材に振り回されることなく、超弩級ノンストップミステリとして仕立ててしまったところにある。しかもその背景として全体的なテーマとなっているのが「家族の絆」という古典的な題材であるところがまた面白い。
あまりにも素材を詰め込みすぎたため、いったい何が話の焦点だったかわからなくなってしまったきらいはあるが、それでも立て続けに降りかかる事件の面白さが、そんな不満を吹き飛ばしてしまう。まあ、とばしすぎてスピードオーバーの反則を犯しているんじゃないかという気がしないでもないが……。
とにかく面白い、というだけなら一級の作品。矛盾点なんか吹き飛ばしてしまう、ジェットコースター・サスペンスを堪能することができた。