平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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柳原慧『パーフェクト・プラン』(宝島社文庫)

パーフェクト・プラン (宝島社文庫)

パーフェクト・プラン (宝島社文庫)

第2回『このミス』大賞においてダントツで称賛を受けた大賞受賞作がついに文庫化! 代理母として生計を立てている良江は、かつて出産した息子を救うため、ある“犯罪”を企てる。そして始まる「身代金ゼロ! せしめる金は5億円!」という前代未聞の誘拐劇! 幼児虐待、オンライントレード、ES細胞、美容整形……現代社会の危うさを暴きつつ、一気に読める面白さ。予想を裏切り続けるノンストップ・誘拐ミステリー、ここに登場!(粗筋紹介より引用)

2004年、第2回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。



身代金を奪わずに現金をせしめる誘拐劇。これだけなら手段の差こそあれ、過去の作品にも前例がある。この作品の凄いところは、代理母、幼児虐待、老人介護、オンライントレード、ES細胞、美容整形などといった現代社会を代表するような素材をこれでもかとばかりに押し詰め、それでいて素材に振り回されることなく、超弩級ノンストップミステリとして仕立ててしまったところにある。しかもその背景として全体的なテーマとなっているのが「家族の絆」という古典的な題材であるところがまた面白い。

あまりにも素材を詰め込みすぎたため、いったい何が話の焦点だったかわからなくなってしまったきらいはあるが、それでも立て続けに降りかかる事件の面白さが、そんな不満を吹き飛ばしてしまう。まあ、とばしすぎてスピードオーバーの反則を犯しているんじゃないかという気がしないでもないが……。

とにかく面白い、というだけなら一級の作品。矛盾点なんか吹き飛ばしてしまう、ジェットコースター・サスペンスを堪能することができた。