- 作者: 真保裕一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/07/01
- メディア: 単行本
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21歳の敦也と、12歳の敦也。二つの物語が交互に語られる。9年前に父を殺害したのは、かつての父の同級生であった。その彼が、仮釈放された。故郷の海で倒れていた彼を家に呼んだ父を、なぜ彼は殺害したのか。
長崎新聞、山形新聞など全10紙に、2000年11月〜2002年4月まで掲載。
ここで語られるのは、敦也という人物の成長記録である。様々なバカをやり、哀しい出会いと別れを繰り返し、そして様々な人と出会うことにより、自らの過去を見つめ直す勇気をようやく持つことができ、新しい自分の道を見つける努力を知ることができた、若者の成長記録である。そこに父の殺人事件、動機の探求、犯人との再会などといった要素が含まれる。
この敦也という人物、過去に父親を殺された過去を持つ以外は、典型的な現代のダメ若者として書かれている。その日暮らしで、アルバイトで適当に生活でき、将来のことを何も考えず、ただその日が楽しければそれでいい。読んでいて腹が立ってきますよ。ただの甘えん坊で。まあ、自分にその要素がないのかといわれたら自信はないけれど。
勝手なことをやるだけやって、傷つけるだけ周りを傷つけて、そして最後にようやく自分の愚かさに気が付く。もっともその愚かさに気付くまでに、かなりの人々に大きな傷を与えている。ただ、そこに過去の殺人という要素が絡み合っている点が、人と違うところだ。
何度も書くが、これは敦也という若者の成長物語である。そこに、ミステリの要素は一つも絡んでこない。ミステリとして読んだら、失望しか抱かないだろう。敦也という人物の成長に我々は何を感じるか。
ただ、個人的に書かせてもらうと、感じるものは何もないんだよね(苦笑)。これだったら、もうちょっとミステリ寄りにしてほしかった。せめて犯人の動機探しをもっと複雑なものにするとか、巻き込まれるとか。この辺は好みだと思うけれど、もう少しひねってほしかったと思う。