平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

駄犬『追放された商人は金の力で世界を救う』(主婦と生活社 PASH!文庫)

 Sランク冒険パーティー・ブルーリングの一員でありながら、不人気職“商人”のトラオ。戦力として微妙な上に、金の使い込みがバレ、リーダーのライネルから「おまえはクビだ!」と宣告。僧侶のシエル、魔法使いのルイーズも同調し、トラオはパーティーを追放されてしまう。仕方なく金の使い込み先だった戦士リオ、僧侶リリス、魔法使いドミニクのAランク冒険パーティー・ガーネットにトラオは合流する。トラオは4年前に彼女たち3人に声をかけ、ブルーリングの金を先行投資して装備をそろえ、情報収集や偵察活動などを行わせていた。合流したトラオたちの初仕事は、ブルーリングを含む魔王討伐メンバーの後を追い、全滅したメンバーの遺体から装備を回収するというもので……!? 「関係ないよ。もう仲間でも何でもないないんだから」。「ずっと仲間だと思っていた」と言われても、今さら遅い――。(粗筋紹介に一部追記)
 ウェブ投稿サイト小説家になろうに掲載の『「足手まといなんだ!」と言われてパーティーを追放された商人は、金の力で世界を救う。「ずっと仲間だと思っていた」と言われても、今更遅い。』より大幅に加筆・修正のうえ改題。2024年3月、刊行。

 昨年、『誰が勇者を殺したか』で評判になった作者の新刊。作者も書いている通り、異世界ものによくある「追放もの」ジャンルの作品。「追放もの」の多くは、実は追放されたものが他の人より有能で、結局追放する側よりも追放された側の方が幸せになる。ところが本作の主人公トラオは、一緒にパーティーを汲んでいるメンバーですら「追放されても仕方がなかったのでは」と思わせるぐらい人物。徹底したお金優先、感情無視の合理主義、ドライすぎる取引、味方すら引いてしまうような魔物討伐。それでも打つ手がことごとく成功してしまう。
 まあ、神すら欺く非人道的な主人公がいてもいいだろうなとは思いながら読み、伝説の装備を得る展開が同じことの繰り返しで中弛みし、無敵であるはずのモンスターは呆気なく倒すし、最後はラノベお馴染みの終わり方のテンプレな展開かと思ったら、最後にやられた。ありゃ、こんなところで伏線を貼っていたのかと、作者の計算にまんまとはまってしまった。この終わり方はずるいわ。
 これはこれで面白かったが、淡々と進んで最後にひっくり返すこのパターンを繰り返されると飽きるかな。新しい展開の作品を読んでみたい。