平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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大藪春彦『殺人許可証No.3』(角川文庫)

ズボンのベルトにはモーゼルHsc自動拳銃、靴の踵には分解したデリンジャーを忍ばせて…。私はいわゆる覆面刑事。そしてやむを得ない場合には殺人も許可された特殊な刑事だ。

――さて、今回の仕事は、せっかくの公休が始まって、これからたっぷりお楽しみ…というときに飛び込んできた。偽金貨の製造団を叩き潰せというのだ。

上司の命令は絶対だ。“殺生な話だ”そう思いつつも、私はまずさぐりを入れるために、暴力団根岸会の牙城にもぐり込んだ!

命知らずの刑事が、悪い奴らを相手に大暴れする、傑作痛快アクション。(粗筋紹介より引用)

1966年発表。



警視庁公安部公安第三課に所属する秘密捜査官、名無しの覆面刑事が、偽金貨製造団を追って最後は香港まで足を伸ばす。邪魔するやつは叩きつぶすだけ。そこには大藪初期の主人公たちの誰もが持ち合わせていた「暗い青春」は姿を消し、ただひたすらアクションを楽しむだけの作品となっている。そして大藪はこの後、エージェントを主人公にした作品をしばらく書き続けていくことになる。

事件そのものはやや小粒であるため、後の作品群に比べて盛り上がり方は今ひとつだが、本作品は後期傑作群を書くための第一歩と考えればいいだろう。