平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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大藪春彦『処刑戦士』(光文社文庫)

処刑戦士 (光文社文庫)

処刑戦士 (光文社文庫)

「ハゲタカ軍団(チーム・ヴァルチュア)」の四人は銃のほかに“静かな武器”を携えている。巨漢の相馬は刺殺用ナイフ、ハンサムな中条は銃型弓矢(クロスボウ)、リーダー格の久保は投げ縄、小柄な松尾は猛毒の吹き矢(ブロウ・ガン)を。彼らが狙う標的は、この世を裏から支配しようと企む怪物・竹山一成だ。常に時代を先取りする、大藪春彦バイオレンス・アクションの決定版!(粗筋紹介より引用)

光文社、カッパノベルスより1979年6月に刊行された。



『処刑軍団』に続く処刑シリーズ、ということになるのだろうか。最も『処刑軍団』に出てくる久保たちは『輪殺の掟』で出てきた3人に新たに1名を加えた軍団によるアクション・ノベルであるが、本作は全く別のグループが登場するので、シリーズ化という名前は不適切かもしれない。ただ、時には組織の力を借りることはあっても、基本的に一人で行動することがほとんどであった大藪作品群が、あえてグループによる仕事を描いたという一点で、シリーズ作品とくくってもいいのではないかと思われる。

描いてあることは今までとそう変わっているわけではない。国や権力、暴力をバックにして暴利を貪る企業・団体を徹底的に叩きのめし、蓄えてあった膨大な現金、宝石などを奪い取るだけのことである。スケールの大きい相手だから、グループの方が描きやすかったのか。ただ、あまりチームプレイを描くのはうまくないように感じるね。面白くないわけじゃないんだけど、これだけの技能を持ったメンバーが4人もいりゃ、さして苦労もなく仕事をやり遂げることができるだろうというイメージが強い。大藪に似合うのは、やはり孤独な戦いなのである。