- 作者: 岡崎隼人
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/06/07
- メディア: 新書
- クリック: 20回
- この商品を含むブログ (82件) を見る
1985年12月生、弱冠19歳の新星のデビュー作。第34回メフィスト賞受賞作。
久しぶりにメフィスト賞受賞作を手に取った。一段組で461ページ、1143円というのは本来なら納得いかないところであるが、本書は一段組で正解だろう。二段組でこんな話を読まされては、不快感が倍増してしまう。
連続乳児誘拐、シリアルキラーによる連続一家皆殺し猟奇事件、さらには小学生の体の皮膚を丸く剥ぐ連続傷害事件と、出てくる事件のいずれもが不快感を誘うものばかり。登場人物たちもまた、頭のいかれた人たちばかり。異様な事件を引き起こす人は、どこか壊れた心を持っているものが多いが、本書ではそんな人物たちばかりが登場し、まとも(何を持ってまともというかはさておき)な人物は登場しない。いわば、壊れた人たちばかりで繰り広げられるノワールである。ここまで来ると、一体何が正常なのか、わからなくなってしまう。
それでも私は、面白く読むことができた。それは、自分に壊れた部分があるからだろうか。こういう作風を帯に書いてあるとおり「青春ノワール」と呼ぶのが正しいのかどうかすらわからない。荒削りで、感情の暴走をそのまま文章にした、そんなイメージが私にはある。怒りとも憎しみとも違う感情の爆発、形容しがたい作品だ。
舞城のデビュー作に似ている部分はあるが、個人的な意見では“似て非なる作品”。舞城作品は、舞台そのものまで壊れた世界を取り扱っているが、岡崎作品は日常の中における壊れた人たちを取り上げている。殺人を殺人として認識している人たちが出てくる分だけ、岡崎作品の方がまだ日常の枠組みを残している。
この作品を通して、作者が何をやりたかったのか、私にはつかみ取ることができなかった。読者を選ぶ作品である。この感情の爆発を、一般の人から共感が得られる作品にまで昇華することができたとき、作者の名前は世間一般に広がるだろう。まだまだ荒削りだが、第二作を期待したい。ただせめて次作は、警察の存在を考慮してほしいものだ。これだけ証拠を残して、捕まらない方が不思議だ(というのを野暮な突っ込みという)。