- 作者: 白河三兎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/04/12
- メディア: 文庫
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2009年、第42回メフィスト賞受賞。同年12月、講談社ノベルスより刊行。改稿の上、2013年4月、文庫化。
1995年夏が舞台。高校三年生の主人公は、周囲からは「マザ」、自殺を思いとどまらせた少女「セミ」からは「イルカ」と呼ばれている。物語は主人公の一人称で進むのだが、この主人公による自己陶酔に浸っている感情が鬱陶しい。読んでいてイライラしたのは私だけだろうか。
結局そんな気持ちのまま、最後まで読み進めてしまった。メフィスト賞らしく、一応殺人未遂事件も起きるのだが、はっきり言って本筋ではない。セミとイルカの、真夏の7日間だけの恋愛、だけでよかったんじゃないだろうか。変な要素はいらなかったと思う。
本作品で面白かったのは、主人公と由利の関係かな。恋愛感情のない、ざっくばらんに(それこそ性関係まで)話せる男女の友人関係というのは、結構憧れるものだ。確かに周囲からは理解され難いだろうが。
初刊時は過去と現在のパートが交互に書かれていたが、文庫化に関して現在のパートは巻末にまとめて書かれた。交互に書かれたら、余計に物語の内容がわかりにくいものになっただろう。この改稿は正解である。もっとも逆にそのせいで、終わりが冗長になったのも事実。もう少し改稿して、一部の内容を削ってもよかったのではないだろうか。
何とも評価しにくい一冊だったが、自分の趣味には合わないことだけはよくわかった。