平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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白河三兎『プールの底に眠る』(講談社文庫)

プールの底に眠る (講談社文庫)

プールの底に眠る (講談社文庫)

13年前の夏休み最終日、僕は「裏山」でロープを首に巻いた美少女を見つける。自殺を思いとどまった少女は、私の命をあなたに預けると一方的に告げた。それから7日間、ばらばらに存在する人や思いや過去が繋がりはじめた。結末は何処に? 切なさと驚きに満ちた鮮烈デビュー作。第42回メフィスト賞受賞作。(粗筋紹介より引用)

2009年、第42回メフィスト賞受賞。同年12月、講談社ノベルスより刊行。改稿の上、2013年4月、文庫化。



1995年夏が舞台。高校三年生の主人公は、周囲からは「マザ」、自殺を思いとどまらせた少女「セミ」からは「イルカ」と呼ばれている。物語は主人公の一人称で進むのだが、この主人公による自己陶酔に浸っている感情が鬱陶しい。読んでいてイライラしたのは私だけだろうか。

結局そんな気持ちのまま、最後まで読み進めてしまった。メフィスト賞らしく、一応殺人未遂事件も起きるのだが、はっきり言って本筋ではない。セミとイルカの、真夏の7日間だけの恋愛、だけでよかったんじゃないだろうか。変な要素はいらなかったと思う。

本作品で面白かったのは、主人公と由利の関係かな。恋愛感情のない、ざっくばらんに(それこそ性関係まで)話せる男女の友人関係というのは、結構憧れるものだ。確かに周囲からは理解され難いだろうが。

初刊時は過去と現在のパートが交互に書かれていたが、文庫化に関して現在のパートは巻末にまとめて書かれた。交互に書かれたら、余計に物語の内容がわかりにくいものになっただろう。この改稿は正解である。もっとも逆にそのせいで、終わりが冗長になったのも事実。もう少し改稿して、一部の内容を削ってもよかったのではないだろうか。

何とも評価しにくい一冊だったが、自分の趣味には合わないことだけはよくわかった。