平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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夏樹静子『湖・毒・夢』(新潮文庫)

湖・毒・夢 (新潮文庫)

湖・毒・夢 (新潮文庫)

一人暮らしの父親が旅行から10日経っても帰ってこない。警察に届けたら、それらしい白骨死体が見つかった。「歯」。

ラブホテルでホステスが、農薬入りのジュースを飲んで死んだ。一緒にいた男性は、宮内庁勤務の初老の男。当然疑いがかかるが、事件は意外な方向へ転回する。「毒」。

常に会社社長である夫に虐げられてきた妻。浮気相手の子供を、社長の子供であるとして遺言状を書かせた愛人。そして社長は、自宅で階段から転落死した。「夢」。

一人暮らしの男が飼い犬とともに殺された。見つけたのは養子である女性。容疑はもう一人の養子にかかった。警察は犬を解剖して死亡時刻を推定する。「犬」。

大勢の釣り客の前で、男性が車ごと湖に転落して死亡した。彼には永年付き合っていた不倫相手がいた。「湖」。

月刊誌に掲載された短編をまとめ、1988年に単行本化された短編集の文庫化。



珍しく一文字だけのタイトルばかりだが、「毒」「犬」「夢」は単行本にまとめられたときに改題されたとのこと。一文字として統一したという以外の意味があったのかは、ちょっとわからない。そのうち3編を表題にした意味も不明である。

どの作品も、ちょっとしたアイデアを手堅くまとめたという印象しかない。ちょっと面白かったのは、「毒」における毒殺トリックだろうか。