半年後に小惑星が地球に衝突し、人類は壊滅するという予測が発表された。ファストフード店で死体で発見された男性も、未来を悲観し自殺したのだと思われた。しかし新人刑事パレスは他殺を疑い、同僚たちに呆れられながらも捜査を始める。世界はもうすぐなくなるのに、なぜ捜査をつづけるのか? そう自問しつつも粛々と職務をまっとうしようとする圭司を主人公としたアメリカ探偵作家クラブ受賞受賞作!(粗筋紹介より引用)
2012年発表。作者の第六長編で初のミステリ。2013年、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀ペーパーバック・オリジナル部門受賞。2013年12月、ハヤカワ・ポケット・ミステリより邦訳刊行。2016年6月、ハヤカワ・ミステリ文庫化。
作者はアメリカ、メリーランド州生まれ。ワシントン大学卒業後、2009年にデビュー。本書は『カウントダウン・シティ』『世界の終わりの七日間』と続く三部作の第一作。原題は"The Last Policeman"。
半年後に地球が滅ぶためパニックになっているのに、コンコード警察署犯罪捜査部制人犯罪化の刑事であるヘンリー・パレスはなぜ地道に捜査を行うのか。この設定だけで、読みたくなること間違いなし。ただ実際に読み進めてみると、ものすごく地味な展開。社会や経済の秩序は失われ、有名企業は倒産し、多くは自暴自棄になって自殺し、残りは自分のやりたいことをやる。破滅する寸前のぎりぎりの街の中で、周囲に飽きられ良ながらも淡々と捜査を進めるパレス。これでパレスが頭脳明晰なら、もしくは圧倒的な暴力を持って次々と障害を乗り越えていくのなら、物語は派手になる。しかしパレスは違う。ただ、関係者に聞き込みを続ける。頭の回転が鋭い方ではないし、気のきいたセリフをしゃべるわけでもない。そこらじゅうの美女を手玉に取るわけでもない。読んでいる方がじれったくなるほどのろまだし、気も弱い。ただ、地道に自分の信じることを続けるのだ。
死を迎えることがわかっているのに、そしてタイムリミットがじわじわと迫っているとき、人はどう行動するのか。そんな社会的なテーマが隠されているのだろうな、とは思う。本書では様々な死生観が主人公の目を通して描かれる。パレスの呟きは、作者の考えや思いだろうか。
ただ、ミステリの謎の方は今一つ。この状況下でそんな面白い謎があるわけでもないだろうから当然だろうし、結局「なぜ追うのか」の方に重点が置かれているのだから仕方がないのだが、もうちょっとミステリの味があってもよかったと思うんだけどな。