生殖のために男女が身体を結合させ「結合人間」となる世界。結合の過程で一切嘘が吐けない「オネストマン」となった圷は、高額な報酬に惹かれ、オネストマン7人が孤島で共同生活を送るドキュメンタリー映画に参加する。しかし、道中で撮影クルーは姿を消し、孤島の住人父娘は翌朝死体で発見された。容疑者となった7人は
2015年9月、KADOKAWAより書下ろし刊行。作者の第二長編。加筆修正に加え、単行本刊行時にときわ書房本店限定で配布された「船橋結合人間」を収録し、2018年7月、角川文庫化。
「結合人間」とはいったい何だろうと思ったら、男女が生殖器を使って交尾するのではなく、子孫を残すために互いの体を結合させることである。顔には四つの目が横一列に並び、蛙に似た大きな口があり、肩から四本の腕が伸び、ドラム缶のような巨大な胴体を四本の脚で支えている。精巣と卵巣がくっつくことで生殖器ができ、子供を自ら生むことができる。一般的に感情をつかさどる部位は女の細胞がもととなり、身体機能や動作をつかさどる部位は男の細胞がもとになる。ところが数千組に一度の割合で、脳機能が逆転した結合人間が生まれてしまう。すると一切嘘が吐けない「オネストマン」となってしまう。よくぞまあ、こんな設定を考え出したものだ。
第一部ともいえる「少女を売る」は、「寺田ハウス」を名乗って安アパートで共同生活を送るネズミ、オナコ、ビデオという若者が主人公。この三人は少女売春斡旋やビデオ販売などで生き延びているのだが、この章は読んでいて気持ちが悪くなる。よくもまあここまで残酷に、そして気持ち悪くなるぐらいの描写で書けるものだ。エログロ、ここに極まれり。読むのを止めようと思ったぐらいだが、なんとか我慢して第二部ともいえる「正直者の島」に入る。
最後は怒涛の推理合戦になるのはこの作者ならではなのだが、そこまで読むのに気持ち悪くなったところに、些細な描写の伏線を拾いまくる推理のオンパレードには疲れてしまったというのが正直なところ。感心はするが、ごちゃごちゃしていて頭のなかで整理がつかない。おまけにあのエピローグには呆然とするしかない。
設定そのものには感心するが、面白いとは思えなかった。今まで食わず嫌いだったことは事実だが、読まなくてもよかったかな、と思っている自分がいる。そもそもよっぽどうまく料理してくれないと、こういう多重推理物を楽しめる度量が自分にはないようだ。