- 作者: 西村京太郎
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 1984/10
- メディア: 文庫
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1978年10月、カッパ・ノベルスより刊行。1984年10月、文庫化。
ベストセラー作家、西村京太郎が最初に手掛けたトラベル・ミステリーもの。当時人気のブルートレインに目を付けて書いたのだろうが、長年書き続け、いつしかこのジャンルが「トラベル・ミステリー」と呼ばれるようになり、ベストセラー作家になるとは夢にも思わなかっただろう。
西村京太郎というと、実は何でも書ける器用な作家だから、ブルートレインに載っていたはずの女性が東京で死体となったトリックについても、それほど悩まず考え付いただろう。ただ作者のさすがなところは、そのトリック、殺人事件に頼らず、さらにタイムリミット・サスペンスをかみ合わせたところにある。当時の国鉄問題も絡め、社会派の要素も絡めるところも巧い。読者を退屈させないその筆は、将来ブームを巻き起こすだけの片鱗が見える。
西村京太郎=トラベル・ミステリーとなり、その膨大な作品量から、ミステリファンからはかえって敬遠されているところがあるけれども、初期の作品には魅力あふれる作品が多いし、トラベル・ミステリーものにしても初期の作品は非常に力が入っている(中期以降に力が入っていないというわけではないが……)。出来る限り頑張ってほしいものだ。