平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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柄刀一『ペガサスと一角獣薬局』(光文社文庫)

 ドラゴンに踏みつぶされた惨死体。五年前に密閉された小屋から発見された白骨。ユニコーンに突かれ、ペガサスに落とされた兄弟。生命を再生し若返らせる館……。幻獣たちが跳梁し、奇蹟が現実のものとなる奇々怪々の事件に、“世界の伝説と奇観”を取材するフリーカメラマン南美希風が挑む。幻想と論理が融合する柄刀ミステリーの真骨頂。(粗筋紹介より引用)
 「龍の淵」「光る棺の中の白骨」「ペガサスと一角獣薬局」「チェスター街の日」「読者だけに判るボーンレイク事件」を収録。2004年~2008年、『ジャーロ』掲載作品に書き下ろしを加え、2008年8月、光文社より単行本刊行。2011年5月、文庫化。

 柄刀一を読むのは15年ぶり。探偵役の南美希風って『密室キングダム』に出ていたのか、探偵役だったっけ、というのは読み終わってから思い出した。
 いずれの短編も、神話に出てくる幻獣や奇蹟を現代によみがえらせ、さらに本格ミステリに融合させている。どうせだったらすべての短編に幻獣を出させればよかったのにと思ったが、そこまで望むのは酷か。
 とはいえ、これだけの設定を考えてくれて、お疲れさまでした、との感想しか出てこないのは、なぜなのだろう。謎そのものに魅力はあるのだが、登場人物と物語に魅力を感じない。そして、結末が今一つ。「チェスター街の日」の謎解きなんて、さすがに無理としか感じない。
 これはもう、好みに合わなかったとしか言いようがない。読んでいて、全然ワクワクしなかった。これじゃ、小説を楽しめないわけだ。