平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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カーター・ディクスン『一角獣殺人事件』(国書刊行会 世界探偵小説全集4)

一角獣殺人事件 世界探偵小説全集(4)

一角獣殺人事件 世界探偵小説全集(4)

ライオンと一角獣が王位を狙って闘った――

パリで休暇を過ごしていたケン・ブレイクは、謎の言葉につられて不可思議な殺人事件にまきこまれた。嵐のなか古城にたどり着いた一行を待っていた正体不明の怪盗フラマンドの大胆な犯行予告。そしてフラマンドの逮捕を宣言した謎の男は、衆人環視のなか、悲鳴をあげながら二階から転げ落ちた。死体の額には、鋭い角のようなもので突かれた痕があった。伝説の怪獣、姿なき一角獣の仕業なのか? フランスの古城を舞台に、稀代の怪盗、パリ警視庁の覆面探偵、ご存じHM卿が、三つ巴の知恵比べを繰り広げる傑作本格推理。(粗筋紹介より引用)

1935年発表。1995年11月、新訳刊行。



HM卿なのでディクスン名義。相変わらず面倒だなと思ってしまう。予想通りのドタバタ劇があって、予想通り古城に皆閉じ込められて、予想通りの不可能犯罪っぽい殺人事件が起きるあたりは相変わらずというかなんというか。ロマンスが混じるあたりも同様。ただ、怪盗や覆面探偵が出てきての三つ巴の争いは珍しい。犯人やトリックを推理するだけでなく、誰が怪盗か、誰が覆面探偵かといった謎もあるので、読者の興味を引くことは確か。そういえばHM卿で情報部の大物なんだな、と今更のように思い出した。

とはいえ、結局のドタバタ劇で推理の興味がそがれてしまうのは残念。一角獣のトリックは、説明されたって実物を見せられなければ想像も付かないような代物なので、考えるだけ無駄。それよりも、誰がフラマンドなのかという点を畳み掛ける最後がなかなかの迫力。これが無いと、やっぱり収まりが悪い。

タイトルと比べてみると、殺人事件の部分ははっきり言って期待倒れ。まあ、それでもディクスン物はディクスン物なんだなと思わせる一冊ではある。良くも悪くも。