平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

伊坂幸太郎『マリアビートル』(角川文庫)

 幼い息子の仇討ちを企てる、酒びたりの元殺し屋「木村」。優等生面の裏に悪魔のような心を隠し持つ中学生「王子」。闇社会の大物から密命を受けた、腕利き二人組「蜜柑」と「檸檬」。とにかく運が悪く、気弱な殺し屋「天道虫」。疾走する東北新幹線の車内で、狙う者と狙われる者が交錯する――。小説は、ついにここまでやってきた。映画やマンガ、あらゆるジャンルのエンターテイメントを追い抜く、娯楽小説の到達点!(粗筋紹介より引用)
 2010年9月、角川書店より単行本刊行。2013年9月、文庫化。

 

 『グラスホッパー』に続く殺し屋シリーズの第二弾。前作の登場人物も出てくるが、読まなくても特に支障はない。前作が今一つだったのであまり読む気は起きなかったのだが、ハリウッドで映画化されるというので手に取ってみた。
 前作同様、「木村」「王子」「果物」(蜜柑と檸檬)「天道虫」の視点で次々と切り替わり、物語が進行してゆく。文章の癖の強さは相変わらずだが、多少は慣れたのか、それほど苦労せず読むことができた。舞台が東北新幹線の中に限られているからかもしれない。
 優等生面の裏で他人を操り悪事に手を占める中学生の「王子」を殺そうとする元殺し屋の「木村」、そして闇社会の大物である峰岸良夫の一人息子を監禁先から救い出し、身代金の入っていたトランクとともに父親へ帰そうとする「蜜柑」と「檸檬」のコンビ、さらになぜかそのトランクを盗むよう依頼された「天道虫」こと七尾。リアリティのない、というか戯画的な登場人物たちが、戯画的な展開を繰り広げる。視覚で楽しむような内容を、文字で楽しむ。それができるのは、伊坂幸太郎だからだ。
 徹底的に娯楽だったね、これは。読者がスッキリ楽しめればそれでよし。だから最後どうなったのかも詳細に書かなかったのだろう。余計な教訓なんかいらないし、正義も何もいらない。
 さて、これが映画になったらどうなるか。ちょっと楽しみだ。