平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ダン・ブラウン『デセプション・ポイント』上下(角川文庫)

 国家偵察局員レイチェルの仕事は、大統領へ提出する機密情報の分析。現在、ホワイトハウスは大統領選の渦中にあり、現職と争っている対立候補は、なんと彼女の父だった。選挙戦はNASAに膨大な予算を費やす現政府を非難し、国民の支持を集めている父が有利に進めていた。そんなある日、レイチェルは直直に大統領から呼び出される。NASAが大発見をしたので、彼女の目で確かめてきてほしいというのだが……。(上巻粗筋紹介より引用)
 状況が飲み込めないままレイチェルが連れて行かれたのは、北極だった。氷棚に埋まった巨大な隕石から等脚類の化石が大量に発見されたのだ。これは地球以外にも生物が存在する証拠であり、まさに世紀の大発見だった。選挙戦は一気に逆転し、大統領が対立候補の娘である自分を情報分析官に選んだ理由を悟る。だが、科学者チームと調査を進めるうちに、レイチェルは信じられない謀略の深みにはまりこんでゆく……。(下巻粗筋紹介より引用)
 2001年、発表。作者の第三長編。2005年4月、角川書店より邦訳、単行本刊行。2006年10月、文庫化。

 アメリカ大統領選とNASAをめぐるポリティカル・サスペンス。主人公で、国会偵察局(NRO)局員であるレイチェル・セクストン、レイチェルの父で上院議員、そして共和党の大統領候補が確実視されているセジウィック・セクストン、その個人秘書であるガブリエール・アッシュ、アメリカ合衆国大統領で再選を目指すザカリー・ハーニー、その上級顧問であるマージョリー・テンチ、NRO局長のウィリアム・ピカリング、米国航空宇宙局(NASA)長官のローレンス・エクストローム海洋学者のマイケル・トーランド、宇宙物理学者のコーキー・マーリンソン、古生物学者ウェイリー・ミン、雪氷学者のノーラ・マンゴア、などなどの視点が短い章で入れ替わり、読者に考える隙を与えずに物語が急ピッチで進んでいく。
 細かい矛盾はあるだろうが、そんなことを考えずに作者が作り出す流れに乗っていけばいい作品。もちろん面白いことが前提であり、その点については問題なし。ということで、素直に面白く読むことができました。