メキシコの麻薬撲滅に取り憑かれたDEAの捜査官アート・ケラー。叔父が築くラテンアメリカの麻薬カルテルの後継バレーラ兄弟。高級娼婦への道を歩む美貌の不良学生ノーラに、やがて無慈悲な殺し屋となるヘルズ・キッチン育ちの若者カラン。彼らが好むと好まざるとにかかわらず放り込まれるのは、30年に及ぶ壮絶な麻薬戦争。米国政府、麻薬カルテル、マフィアら様々な組織の思惑が交錯し、物語は疾走を始める――。(上巻粗筋紹介より引用)
熾烈を極める麻薬戦争。もはや正義は存在せず、怨念と年月だけが積み重なる。叔父の権力が弱まる中でバレーラ兄弟は麻薬カルテルの頂点へと危険な階段を上がり、カランもその一役を担う。アート・ケラーはアダン・バレーラの愛人となったノーラと接触。バレーラ兄弟との因縁に終止符を打つチャンスをうかがう。血塗られた抗争の果てに微笑むのは誰か――。稀代の物語作家ウィンズロウ、面目躍如の傑作長編。(下巻粗筋紹介より引用)
2005年、発表。2009年8月、角川文庫より翻訳刊行。
ウィンズロウはニール・ケアリーシリーズの一部しか読んだことがなく、こんな骨太すぎる犯罪小説を書けるとは思わなかった(何を今更)。粗筋紹介にはアート・ケラー、バレーラ兄弟、ノーラ、カランが主要登場人物として出てくるが、それ以外にも10人以上の人物が物語を彩っていく。1975年から2004年の約30年に及ぶラテンアメリカを中心とした麻薬戦争を克明に描いていることからとても長いし、展開がゆっくりとしているのだが、それでも読者を飽きさせない腕がすごい。それぞれが時には味方、時には敵といった感じでつながるのだが、心理描写も巧みだし、多数の人物の思いと怒りが文字間から浮かび上がってくるのは見事。時間はかかったが、いいものを読むことができた。今更ながらだが。
さあ、次は続編『ザ・カルテル』を読もうか。