平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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金井貴一『謀略の鉄路(レール) 』(廣済堂ブルーブックス)

 昭和二十四年七月、国鉄総裁・下山定則とみられる轢断死体が常磐線北千住駅綾瀬駅の間で発見される。当時、国鉄は経営合理化のため、約九万五千人の人員整理を迫られていた。また、時を同じくして、東北本線王子駅上中里駅で蜜柑箱に詰められた男性のバラバラ死体も見つかり、二つの事件の捜査が始まる。下山総裁の死は自殺か他殺か!?政府に対する民衆の不満、GHQの圧力、さらに台湾の国民政府樹立に関する政治的取引など、事件の裏には深い闇が隠されていた。いまだ解明されていない昭和史の謎を追う!(粗筋紹介より引用)
 1998年5月、書下ろし刊行。2000年12月に『小説・下山事件―謀略の鉄路』と改題され、文庫化されている。

 

 戦後の国鉄三大ミステリーの一つである下山事件は、色々なミステリの題材となっているが、本作もその一つ。下山事件と時を同じく、別のバラバラ事件が起きているという設定。もちろん、このバラバラ事件は実在のものではなく、作者の創造である。
 下山事件とバラバラ事件の両方の捜査が交互に進み、だれもが考えるように最後は両者が結びつく話となる。途中で密室が出てくるなど、ミステリの流れは十分踏まえているのだが、読んでいてなんか軽い。最後はかなりスケールの大きい話になるにもかかわらずだ。343ページとそれなりに厚めの本なのだが、スカスカ読めてしまう。テンポがいいというのとも違う。筆致の問題なのかな……、読み終わってみると、作者には悪いのだが、なんか馬鹿馬鹿しさを感じてしまった。なんだい、これ、という感じが一番ぴったり来るかもしれない。
 よく考えましたね、で終わってしまった作品。やっぱり荒唐無稽な筋立てだったとしか言いようがない。とはいえ、もっと説得力のある書き方というのも難しいよな……。まあ、こんなのもあるよね、と言って終わりました。