少年ジョニーの人生はある事件を境に一変した。優しい両親と瓜二つのふたごの妹アリッサと平穏に暮らす幸福の日々が、妹の誘拐によって突如失われたのだ。事件後まもなく父が謎の失踪を遂げ、母は薬物に溺れるように……。少年の家族は完全に崩壊した。だが彼はくじけない。家族の再生をただひたすら信じ、親友と共に妹の行方を探し続ける――アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長編賞、英国推理作家協会賞最優秀スリラー賞受賞。(上巻粗筋紹介より引用)
「あの子を見つけた」大怪我を負った男はジョニーに告げた。「やつが戻ってくる。逃げろ」少年は全速力で駆けた。男の正体は分からない。だがきっと妹を発見したのだ。アリッサは生きているのだ。ジョニーはそう確信する。一方、刑事ハントは事件への関与が疑われる巨体の脱獄囚を追っていた。この巨人の周辺からは、数々の死体が……。ミステリ界の新帝王が放つ傑作長篇。早川書房創立65周年&ハヤカワ文庫40周年記念作品。(下巻粗筋紹介より引用)
2009年、発表。ジョン・ハートの第三長編。2010年4月、邦訳がポケットミステリとミステリ文庫の双方から刊行。
13歳のジョニーが、一年前に失踪した双子の妹アリッサを探す物語。簡単に言うとそれだけになってしまうのだが、家庭崩壊や親友との繋がり、さらに事件解決に執念を燃やす刑事に脱獄囚などが色々と話に絡み、物語は膨らんでいく。
個人的にはジョニーの視点だけにしてほしかったと思うのだが、ハントの視点がないと事件の背景などが語られないところも多く、難しいところ。ただハントの視点はもう少し減らしてほしかったかな。せっかくのジョニーの物語が、所々で分断されてしまった感がある。
ただ書き方はシンプルで、素直に物語に没頭することができた。単純な事件に見えたが、予想以上に話が広がっていくところは面白い。ただもう少しテンポよく、話が進展できなかったのだろうか。読んでいてもどかしいところが多かった。
ミステリというよりは、普通小説に近い気がする。面白かったけれど、個人的には絶賛とまではいかなかった。