平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

彩坂美月『金木犀と彼女の時間』(東京創元社 ミステリ・フロンティア)

金木犀と彼女の時間 (ミステリ・フロンティア)

金木犀と彼女の時間 (ミステリ・フロンティア)

  • 作者:彩坂 美月
  • 発売日: 2017/09/29
  • メディア: 単行本
 

 屋上で拓未に告白された直後、菜月の人生三度目のタイムリープが始まった。この状態に陥ると、菜月は同じ一時間を五回繰り返すことになる。つまり菜月は、このあと拓未に五回告白されるはずだった。しかし一回目、告白の場所に向かおうとした菜月の目の前で、拓未は屋上から墜死する。なぜ!? タイムリープ中の出来事が変更されるはずない。それなのにどうして拓未の死という、ありえない事態が発生することになったのか? チャンスはあと四回、それまでに彼の死を食い止める方法を、絶対に見つけなければ! 他人に心を開き切ることができない女子高生が文化祭中の校舎を駆け巡る、恋、友情、不安全てを詰め込んだ学園ミステリ。心境著しい俊英が放つ快作!(粗筋紹介より引用)
 2017年9月、書き下ろし刊行。

 

 いわゆるタイムリープ物で、遭遇した悲劇を書き換えようとする青春物語。言ってしまえばよくある話で、どこに新味を持たせるかということになるのだが、読み終わって初めてなるほど、と思いはした。まあ、ミステリとして驚くようなところはなかったかな、というのが正直なところ。
 作品を通して、主人公の上原菜月が成長していく過程は楽しめたかな。これまたありきたりなテーマだったが、逆にその分、ストレートには伝わってきた。
 ただ、作者の苦労に反比例するように、既視感の強い作品であることは否めない。ライトノベル向けにするには古いと言われそう。特に年取ったおじさんが読むと、こんな頃があったよね、って言いたくなるような作品であった。
 帯に担当編集者の言葉があるんだけど、高校の文化祭で見ず知らずの御婦人と『行きずりの街』について議論を戦わしたというのはちょっと笑っちゃった。