平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

D・M・ディヴァイン『悪魔はすぐそこに』(創元推理文庫)

悪魔はすぐそこに (創元推理文庫)

悪魔はすぐそこに (創元推理文庫)

 

  ハートゲート大学の講師ピーターは、チェスの最中に亡き父の友人ハクストンから助力を壊れた。横領の嫌疑をかけられて免職の危機にあるというのだ。しかし教授たちによる審問の場で、ハクストンは脅迫めいた言葉を口にしたのち、謎の死を遂げる。次いで図書館で殺人が起こり、名誉学長の暗殺を仄めかす脅迫状が大学宛に舞い込んだ。彼は式典のために近く大学を訪れる予定だが……。翻弄される人々を嘲笑うかのごとく相次ぐ事件は、関係者の過去を炙り出すように、八年前に起きたある女学生の死へと収斂してゆく。クリスティが絶賛した、英国探偵小説の実力派が贈る傑作、本邦初訳。(粗筋紹介より引用)
 1966年、発表。2007年9月、邦訳刊行。

 

 イギリスの二流大学における数学講師ピーターとその婚約者で経済学科講師のルシール・プロヴァン、ルシールの同居人である事務局員のカレン・ウエストールと法学部長ラウドンという二組の恋愛模様を軸に据え、三人称ではあるが彼らの視点が切り替わりながら、大学に次々と降りかかる事件が語られる。
 なんともまあ地味な展開なんだけど、それでいて目が離せない仕上がりになっているのはさすが。先の展開が気になって、結局続きを読んでしまう。うまいんだよなあと思ってしまう。登場人物が結構多いし、人間関係もいろいろと複雑なんだが、頭にすんなり入ってくるのも、描写が優れているからなんだろう。それと、ピーターの軟弱さは読んでいてイライラしたよ、本当に。
 事件そのものは割と単純なんだし予想できたんだけど、それでいて最後になると驚いてしまうんだから、やっぱり意外と言っていいのかな。できれば違ってほしかったけれど、なんとなく。
 クリスティ絶賛なんだ、と帯を見て思ったけれど、読み終わってみるとなんとなく納得。50年前の作品だけど古さは感じず、素直に面白かったです。