平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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千田理緒『五色の殺人者』(東京創元社)

五色の殺人者

五色の殺人者

  • 作者:千田 理緒
  • 発売日: 2020/10/10
  • メディア: 単行本
 

  高齢者介護施設・あずき荘で働く、新米女性介護士のメイこと明治瑞希(めいじ みずき)はある日、利用者の撲殺死体を発見する。逃走する犯人と思しき人物を目撃したのは五人。しかし、犯人の服の色についての証言は「赤」「緑」「白」「黒」「青」と、なぜかバラバラの五通りだった! ありえない証言に加え、見つからない凶器の謎もあり、捜査は難航する。そんな中、メイの同僚・ハルが片思いしている青年が、最有力容疑者として浮上したことが判明。メイはハルに泣きつかれ、ミステリ好きの素人探偵として、彼の無実を証明しようと奮闘するが……。不可能犯罪の真相は、切れ味鋭いロジックで鮮やかに明かされる! 選考委員の満場一致で決定した、第30回鮎川哲也賞受賞作。(粗筋紹介より引用)
 2020年、第30回鮎川哲也賞受賞。応募時タイトル「誤認五色」。改題の上、2020年10月、単行本刊行。

 

 ミステリ好きで、周りの受けもよさそうなメイが主人公であり、相棒のハルとのやり取りがどことなくユーモラス。殺人事件という殺伐した印象は全然なく、しかも気になる男性も出てきてというところは青春ミステリっぽい味もあり。読み心地は悪くないのだが、いかんせん肝心の謎が小粒すぎる。五人の目撃者による犯人の服の色は五通り。謎といえば強烈な謎のように見えるけれど、文章が素直というか、伏線がわかりやすいというか、大した謎になっていないところが大減点。消えた凶器の方もわかりやすい伏線のおかげでですぐにわかる。だいたいどっちの謎も、警察の捜査ですぐにわかるんじゃないかと言いたい。最後にこれだけはやらないでくれ、というネタが最後に出てきて、もう幻滅。読みやすい分、がっかり感が強かった。短編だったらまだ我慢ができたと思うが、この謎で長編を引っ張るのはかなりしんどい。
 登場人物のキャラクターはそれなりによかったので、まずはカチッとした謎を持ってきてほしい。そうでないと、二作目は厳しすぎる。