平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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バリー・ライガ『さよなら、シリアルキラー』(創元推理文庫)

さよなら、シリアルキラー (創元推理文庫)

さよなら、シリアルキラー (創元推理文庫)

 

  ジャズは高校三年生。田舎町ロボズ・ノッドではちょっとした有名人だ。ある日町で衝撃的な事件が起きた。指を切り取られた女性の死体が発見されたのだ。連続殺人だとジャズは訴えたが、保安官はとりあわない。なぜジャズには確信があったのか。それは彼が21世紀最悪といわれる連続殺人犯の息子で、幼い頃から殺人鬼としての英才教育を受けてきたからだった。親友を大切に思い、恋人を愛するジャズは、内なる怪物に苦悩しつつも、自らの手で犯人を捕まえようとする。全米で評判の異色の青春ミステリ。(粗筋紹介より引用)
 2012年発表。2015年5月、邦訳文庫刊行。

 

 作者は2006年デビュー。YA小説を中心に活躍。本書はシリーズ三部作の第一作。
 主人公のジャスパー(ジャズ)・デントは17歳、高校三年生。父親のウィリアム(ビリー)・コーネリアス・デントは、過去21年間で123人を殺害したが、4年前に町の保安官G・ウィリアム・タナーに捕まり、司法取引で死刑を免れたが、32回の終身刑を受け、刑務所の独房にいる。ジャズは父親に殺人等の英才教育を受け、過去に殺人を犯したかもしれない朧げな記憶におびえつつも、普通の青春を送っている。一部の人の視線こそ厳しいものの、恋人のコニー、親友で血友病A患者のハウイー・ガーステンに囲まれて過ごしている。
 はっきり言っちゃうと、謎の連続殺人犯に挑む、という話だけなんだが、父親が連続殺人犯であった高校生を主人公に持ってきたところが目新しいところだろうか。日本だったら目を付けそうな人物がまったく捜査を受けていない点がちょっと気にかかったが、物語のテンポがよく、高校生ならではの友情と葛藤もうまく書かれ(若者の性衝動って、どこの国も同じなのね)、登場人物もややステロタイプに描かれた点が感情移入しやすく、かえって読みやすい。残酷な殺人シーンも詳しい描写を避けている点は、YA小説だからか。その方がうなされずに助かるが。
 次作への引きもうまく、やや軽いなあと思わせる部分はあったが、結構楽しむ読むことができた。時間があったら次作も読んでみたい。