- 作者: 山村美紗
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 1986/11
- メディア: 文庫
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1975年9月、光文社、カッパ・ノベルスより書き下ろし刊行。1986年11月、光文社文庫化。
後に人気作家となる作者の第二長編であり、作者の代表作ともいえるキャサリンシリーズ第1作である。
アメリカ副大統領の娘であるキャサリンが、後に恋人となる浜口一郎とともに、華道の舞台における権力争いにまつわる連続殺人事件に挑む。トリックの女王と呼ばれる作者らしく、二番目の殺人は茶室における密室殺人事件である。事件の真相はなかなか凝ったものであり、読みごたえがある。とはいえ、副大統領令嬢という地位の高さを使った安易な立ち回りがあったのはちょっと残念。ある意味、都合よすぎる部分がある。それに、メロドラマっぽい仕上がりが見られるのは、女性作家ならではかもしれない。別に悪いわけではないのだが。
後にシリーズ化されて味は薄まってしまうものの、本作はまだまだ一作ごとに力を入れていた時期であり、この魅力的な名探偵を生み出したことと相まって、作者の代表作に相応しい仕上がりである。舞台となっている京都の描写も悪くない。多作家だからといってミステリファンからは毛嫌いされている感があるものの、初期の頃には力作も多く、読まないのは勿体ない。