平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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牧村泉『邪光』(幻冬舎)

邪光

邪光

  • 作者:牧村 泉
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2003/01
  • メディア: 単行本
 

 猟奇的な大量殺人事件で世間を震撼させた赤光宝霊会。教祖の久江は<邪光>を放つ者は粛正されなければならないという教義に基づき、殺人を繰り返し逮捕された。ある日、32歳の主婦・真琴が住むマンションの隣室に、黎子という少女が引っ越してくる。黎子は教祖・久江の一人娘だった。真琴はそんな黎子に同情し親しくなっていくが、やがて黎子に辛く当たっていた人間ばかりが、死んだり狂いだしたりする。現場には、なぜか黎子の姿が……。黎子が<粛正>を始めたのか? 真琴の疑惑は深まるばかりだった。(帯より引用)
 2002年、第3回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞。加筆訂正のうえ、2003年2月、幻冬舎より単行本刊行。

 

 作者はフリーランスのコピーライターとのこと。そのためかどうかはわからないが、文章は読みやすい。
 大量殺人事件を起こした小さな宗教団体の教祖の娘と平凡な主婦の真琴が知り合うところから物語は始まる。そんな人物が来ればまあいじめられるだろうなあと想像できるだろうが、その通りな状況はちょっとテンプレ的か。それでも少女の不気味さは十分に出ていた。
 ところが物語が、少女の不可解さや不気味さの方向に進むのではなく、真琴の内面と背景に進んでいったのはどうにも不可解。本のタイトルは「邪光」だし、教祖が殺人を繰り返したのは<邪光>を放つものを粛正するため。そして黎子ですら<邪光>の話をしているのだから、そちらをメインのまま話を終わらせるべきではなかっただろうか。
 作品自体も、主人公である真琴の悲しさが主になっており、ホラー要素がどんどん薄れていっているのが残念。書き方を間違えたとしか思えない。