- 作者: 早坂吝
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/02/05
- メディア: 新書
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2015年2月、書き下ろし刊行。
上木らいちは高級マンション707号室に住む高校生で、援交探偵。洗面所には虹の色一色ずつ揃った歯ブラシがあり、らいちと固定客専用である。
日本有数の大企業の社長である村崎社長の秘書が殺害された。遺体の上半身が裸のままコピー機に載せられ、下半身は机の上に載っていた。そして女性の胸部のカラーコピーが12枚、散らばっていた。村崎のアリバイの証明は、援交相手であるらいち。村崎は月曜日の客だった。「紫は移ろいゆくものの色」。
火曜日の客であり、警視庁捜査一課殺人犯捜査第七係の藍川警部補は、ラブホテルでの殺人事件で捜査中、別の部屋にいたらいちと初めて出会った。「藍は世界中のジーンズを染めている色」。
水曜日の客であり、キャバレーの料理人である青野のところに、らいちからメールが送られてきた。らいちが偶然助けた少女が後日、青色のフードを着た男と一緒に隣県の漁村に行くところを目撃する。少女の母親が少女を探していることを知り、漁村まで行くと、海のパワーを分け与えるという「青の館」があった。中に入ったらいちは、密室での教祖の死に遭遇する。「青は海とマニキュアの色」。
木曜日の客である緑川に、らいちは相談する。覗かれているかもしれない、と。「緑は推理小説御用達の色」。
イケメンの俺は、よくモテる。しかし三年の時に転校してきた上木らいちは、俺に全く見向きもしない。落とそうと思ったおれはらいちに告白するが、らいちは一発五万円と返事した。「黄はお金の匂いの色」。
客がいないのに、橙の歯ブラシは何のために用意されているのか。藍川の質問に、らいちはとても大切な存在のためと答えた。「橙は???の色」。
上木らいちとはいったい何者か。「赤は上木らいち自身の色」。
上木らいちの部屋にある7本の歯ブラシになぞらえた7本の短編。最初は現場状況がエロで事件自体は普通の本格ミステリかと思わせたら、水曜日はとんでもない事件だし、木・金が掌編の短さとなり、土で全く想像せぬ方向に行き、日でとんでもない展開となる。まあ、色々仕掛ける方法はあるものだと感心はしてしまうが、本格ミステリを茶化す方向性があまり感心できない。しかもその効果が今一つというか、読みにくいというのが非常に残念である。
探偵が探偵であるため、性描写があるのは仕方がないが、読者を限定させる方向になっているのは確か。万人向けではない作品だが、トリック等についてはもう少しストレートにしてもいいのではないかと思ってしまう。最後の二編はひねりすぎで、読者を戸惑わせるだけに終わっている。
意欲は買うが、今一つ、といったところか。