- 作者: 七河迦南
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2008/10
- メディア: 単行本
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「今は亡き星の光も」「滅びの指輪」「血文字の短冊」「夏期転住」「裏庭」「暗闇の天使」「七つの海を照らす星」による連作短編集。2008年、第18回鮎川哲也賞受賞。同年10月、単行本で刊行。
児童養護施設「七海学園」を舞台にした連絡短編集。それぞれの短編で日常の謎が解けると同時に、最後の話で大きな謎が解けるという構成は、第3回受賞者の加納朋子以来、東京創元社のお家芸とも言える。逆に言えば、鮎川賞でないと受賞しないだろうということもできるのだが。
主人公である施設保育士の北沢春菜が不思議な事件に遭遇し、児童福祉司の海王に相談して謎が解かれるという設定。これで春菜と海王が恋愛に陥ればあまりにもワンパターン……となるところだが、海王は既婚ということでさすがにその設定は無かった。主人公の友人、野中佳音も描かれ方が悪くない。一応社会的な問題も出てくるが声高に主張しないところは助かった。あまり強く訴えられると、作品の良さが失われてしまう。そういう意味で、島田荘司の選評はくどすぎるのだが。
ミステリとしては弱い。弱すぎ。推理らしい推理もない。謎自体は他愛のないものも多く、いつの間にか解けている謎も多かった。ややご都合主義じゃないかと思うところもあるのだが、あまり扱われない舞台と瑞々しい文体で救われているんじゃないかな。施設に出てくる子供だからといっても明るく過ごす姿には好感が持てるし。
回文のこだわりはどうかと思った。大して面白くもなかったし、小説に寄与しているとも思えない。作者名も回文になっているけれど。
この作品を読んで思ったけれど、日常の謎系は、殺人事件などを扱う本格ミステリと比べ、通常では使えないよと思うようなトリックでも使うことができる分、謎や推理としての面白さが残されている気がする。今更密室やアリバイをストレートに持ち出されも、手垢が付いたと言われると返す言葉がなくなってしまう。
続編『アルバトロスは羽ばたかない』はこのミスや本格ミステリ・ベスト10でランクインしているが、どうなんだろう。少しは化けたのだろうか。