平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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三田村志郎『嘘神』(角川ホラー文庫)

嘘神 (角川ホラー文庫)

嘘神 (角川ホラー文庫)

愛する弟を失ったコーイチは失意の日々を送っていたが、高校で初めて友達と呼べる仲間たちと出会った。しかし、ある朝目覚めると、5人の仲間と出口のない部屋にいた。「嘘神」の声が非情なゲームの始まりを告げる。ルールは7つ。しかし、嘘神の言葉にはひとつだけ嘘がある。与えられた水と食料はわずか。仲間の命を奪って脱出するのか、それとも……。若き新鋭、驚愕のデビュー作! 第16回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。(粗筋紹介より引用)

2009年、第16回日本ホラー小説大賞長編賞受賞。応募時ペンネームてえし。加筆修正のうえ、同年10月、角川ホラー文庫より刊行。



出口のない部屋に閉じ込められた高校生6人が、生き残りをかけて争うゲーム小説。登場人物もテンプレートだし、結末までの展開も含めよくある小説、と言ってしまえばそれまで。だが、テンポよく書けているし、大学生という若さのせいか、何とも言えないパワーが感じられる。問題は、ゲームに引きずり込む理由が全然ないところ。もう少し意味づけをしてほしかったな。

読んでいる途中はそれなりに面白いものの、読み終わってしまうとがっかり感がある。はっきり言ってしまえば、勢いだけで書いた小説。もうちょっとプラスアルファがあればな、と思ってしまうが、新人作家にそれを求めるのは無いものねだりだろうか。

それでも、悪くは無いなと思った一冊。一応は楽しんだし。