平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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城平京『虚構推理短編集 岩永琴子の出現』(講談社タイガ)

 

虚構推理短編集 岩永琴子の出現 (講談社タイガ)

虚構推理短編集 岩永琴子の出現 (講談社タイガ)

 

 

 妖怪から相談を受ける『知恵の神』岩永琴子を呼び出したのは、何百年と生きた水神の大蛇。その悩みは、自身が棲まう沼に他殺死体を捨てた犯人の動機だった。――「ヌシの大蛇は聞いていた」
 山奥で化け狸が作るうどんを食したため、意図せずアリバイが成立してしまった殺人犯に、嘘の真実を創れ。――「幻の自販機」
 真実よりも美しい、虚ろな推理を弄ぶ、虚構の推理ここに帰還!(粗筋紹介より引用)<br>
 「第一話 ヌシの大蛇は聞いていた」「第二話 うなぎ屋の幸運日」「第三話 電撃のピノッキオ、あるいは星に願いを」「第四話 ギロチン三四郎」「第五話 幻の自販機」を収録。2018年12月、刊行。

 『虚構推理 鋼人七瀬』に出てくる、一眼一足であやかしの者の相談事を受ける岩永琴子が主人公の短編集。素っ気ない恋人、桜川九郎も登場。「第一話」と「第三話」は『メフィスト』に掲載されたが、残りは書き下ろし。もっとも「第一話」から「第四話」までは、『少年マガジンR』に連載中のコミックス『虚構推理』第7~9巻(画:片瀬茶柴)に漫画で収録されている。本作品の表紙も、片瀬茶柴である。
 漫画原作の方が忙しいのか、文章の方はさっぱりな城平京。久しぶりの虚構推理シリーズは短編集。もっと書けばいいのに、と思ってしまう。
 あやかしの者からの相談を受け、嘘の推理を組み立てるという方向性は変わっていないが、そのウエイトはかなり小さくなっている。琴子と九郎のやり取りは読んでいて楽しいのだが、嘘の推理が少なくなるのはシリーズの楽しみが減ってしまっていて残念。短編だからそこまで複雑なことはできないのかもしれないが。それに、いつも九郎が死んでばかりいたら、読んでいる方もたまらないか。
 作者の執筆ペースを考えたら、読めただけで十分ということになるだろうか。