平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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三津田信三『水魑の如き沈むもの』(講談社文庫)

奈良の山奥、波美(はみ)地方の"水魑(みづち)様"を祀る四つの村で、数年ぶりに風変わりな雨乞いの儀式が行われる。儀式の日、この地を訪れていた刀城(とうじょう)言耶(げんや)の眼前で起こる不可能犯罪。今、神男(かみおとこ)連続殺人の幕が切って落とされた。ホラーとミステリの見事な融合。シリーズ集大成と言える第10回本格ミステリ大賞に輝く第五長編。(粗筋紹介より引用)

2009年」12月、原書房より単行本書下ろし刊行。2010年、第10回本格ミステリ大賞受賞。2013年5月、講談社文庫化。



刀城言耶シリーズ長編第5作。怪異譚を蒐集している刀城が怪しい話を聞いては自分で確認するためにそこへ行き、事件に巻き込まれて、色々推理をしては自分で打ち消し、ようやく最後に答えを出す。毎度のことであり、ワンパターンと言ってしまえばそれまで。横溝正史だと似たような話でも楽しむことができるのに、三津田信三だとああまたか、と思ってしまうのはなぜだろうか。これは別に偏見ではないと思う。

ただ本作は、背景が今まで以上に書きこまれている分、楽しく読むことができた。もしかしたら、編集者の祖父江偲が本格参戦しているからかもしれない。事件や推理の部分は、特に語るほどのことは無い。推理を聞いても、ああ、そう来るんだとしか思えないのは、ホラーの部分に比べ推理が弱いからだろうか。それとも刀城の推理にカタルシスが何も感じられないからだろうか。

展開は楽しめたけれど、たまには違うパターンで読んでみたい。