平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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早坂吝『メーラーデーモンの戦慄』(講談社ノベルス)

メーラーデーモンの戦慄 (講談社ノベルス)

メーラーデーモンの戦慄 (講談社ノベルス)

メーラーデーモンを名乗る者から「一週間後、お前は死ぬ」というメールが届いた後、殺害される連続殺人が発生! 「お客様」を殺された上木らいちは捜査を開始。被害者は全員、X‐phone社のガラケーを所有していたことが判明する。一方、休職中の元刑事・藍川は「青の館」で過ごすが、小松凪巡査部長のピンチを知り、訳ありの宿泊者たちと推理を展開。らいち&藍川、二人は辿り着いた真相に震撼する!!(粗筋紹介より引用)

2018年9月、書き下ろし刊行。



援交探偵上木らいちシリーズ最新作。今回はガラケーに死ぬというメールが送られた1週間後に殺されるという劇場型犯罪。上木らいちが捜査に乗り出すとともに、前作で心にダメージを追って休職中の藍川警部補が「青の館」の宿泊客とともに推理を展開する。

前作までの登場人物たちや舞台が登場(『RPGスクール』まで絡む)。さらに作者自身までテレビのコメンテータとして登場するメタな展開。しかも「読者への挑戦状」まで登場。一方連続殺人事件の謎の方は、あまりにも情けないというか……。こんな動機で連続殺人を犯すなよ、と言いたくなるが、小説上の登場人物に行っても無駄か。

ある意味でらいちシリーズの総集編といっていいような内容。前作のような一発大物といったものはなく、逆にジャブのように細かいネタやトリックが繰り出される印象。企業名云々のお約束には笑っちゃった。「騙される喜びを味わいたいから推理はしないという軟弱な読者よ」という挑発にも、笑うしかないよね。それでもバカバカしいから、推理はしないよ(苦笑)。犯人なんてどうでもいいやと思わせる内容なのに、真面目に推理を繰り広げる展開をどう読めばいいのか。

何とも理解し難い作品だが、どう読めばいいのかな。バカバカしいと笑っちゃえばいいのだが、それだけではない不思議な印象を持たせる作品。とはいえ、傑作とはとてもじゃないが言えないが。