
- 作者: 市川憂人
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2018/09/12
- メディア: 単行本
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同じ頃、ヒューの所有するガラス製造会社の社員とその関係者四人は、知らぬ間に拘束され、窓のない迷宮に閉じ込められたことに気づく。傍らには、どこからか紛れ込んだ硝子鳥もいた。「答えはお前たちが知っているはずだ」というヒューの伝言に怯える中、突然壁が透明になり、血溜まりに黄たわる社員の姿が……。
鮎川哲也賞受賞作家が贈る、本格ミステリーシリーズ第3弾!(粗筋紹介より引用)
マリアと漣シリーズ第3作目。過去作品でのキーワードであるジェリーフィッシュや青いバラが出てくるところは、シリーズファンをにやりとさせてくれる。
72階建てのビルが爆破テロに巻き込まれ、しかも爆破とは別に殺害された複数の遺体が見つかる展開。一方では、ガラスの迷宮に閉じ込められた関係者たちが続けて殺害される。電気を流すとガラスになるという壁の中。1983年当時には存在しない物を利用した、作者ならではの不可能犯罪である。
緊迫した展開であることは事実なんだけれども、タワーの爆破テロの描写にはそれほどの緊迫感はないのがちょっと残念。まあ、パニックものではないから仕方がないか。一方の連続殺人事件も、人工的な匂いが強すぎ、面白みに欠ける。グラスバード(硝子鳥)についても、描写についてちょっと問題があるんじゃないかと思わせるものがあるものの、容易に想像がつく。最後のトリックについては、伏線こそ張っているものの、アンフェアに近いんじゃないかな。
いろいろ文句は書いているけれど、読んでいる途中は面白かった。マリアと漣やジョン・ニッセン少佐のやり取りは、読んでいて楽しい。シリーズものならではの楽しさなので、途中から読んだら少々厳しいかもしれないが。できればもう少し、ストレートな本格ミステリを書いてほしいかなと思う。とはいえ、わけのわからないことに巻き込まれて暴れ回るマリアが楽しいから、今のままでもいいのかな。