- 作者: 早坂吝
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/03/03
- メディア: 新書
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2016年3月、書き下ろし刊行。
メフィスト賞作家、早坂吝の新作だが、早坂を読むのは初めて。表紙のイラストが今時のラノベ風なので引き気味だったが、中身は案外まともだった。
エロミスなどと謳っているが、過去にはソープ嬢の探偵もいたし、目の付け所は悪くないがそこまで珍しい話でもない。エロミスというのならもっとエロシーンがあるかと思ったが、残念ながら描写も淡泊だし、いまいち。社会派、というほどの問題提起をしているわけでもない。とまあ、出版社の惹句に文句を付けた後、中身に触れてみる。
九枚の扇形が放射状に突き出た円を、二枚重ねた形の館で、どの扇形に行くためにも一度円形ホールを経由しなければならず、一階と二階を行き来できるのはホールの中心にある螺旋階段のみ。いかにも、という感じの館だし、作中でも揶揄されているぐらい。まあ、これを使ってトリックを仕掛けますよ、と見え見えだし、事実連続殺人事件が発生。まあ、事件のトリックと犯人当てははっきり言って添え物。むしろ作品の肝は、上木らいちの視点で語られる連続殺人事件とは別にある、戸田公平の章がどういう風に重なり合うかという点。一部は想像付いたのだが、さすがに全部は予想つかなかった。それだけでも意外だったが、さらに結末まで読んでかなりびっくり。なるほど、こういう着地点のミステリがあるのか、と感心した。うん、この構成をよく考えた、と言いたい。作者の狙いは、見事成功した、と言っていいだろう。
ミステリもひねるといろいろ出て来るな、と素直に感心した。この手の作品ばかり読まされるとさすがに腹が立つだろうけれど、たまに読む分にはいいかもしれない。