平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

早坂吝『双蛇密室』(講談社ノベルス)

双蛇密室 (講談社ノベルス)

双蛇密室 (講談社ノベルス)

「援交探偵」上木らいちの「お客様」藍川刑事は「二匹の蛇」の夢を物心付いた時から見続けていた。一歳の頃、自宅で二匹の蛇に襲われたのが由来のようだと藍川が話したところ、らいちにそのエピソードの矛盾点を指摘される。両親が何かを隠している? 意を決して実家に向かった藍川は、両親から蛇にまつわる二つの密室事件を告白された。それが「蛇の夢」へと繋がるのか。らいちも怯む(!?)驚天動地の真相とは?(粗筋紹介より引用)

2017年4月、書き下ろし刊行。



4作目となる援交探偵シリーズ。今回はシリーズを通じて登場している藍川刑事の過去の話。鍵のかかったプレハブで藍川刑事の実の父親が殺害され、母が倒れていた事件と、藍川が1歳の時に高級マンションの最上階の部屋で毒蛇にかまれて殺されそうになった事件。二つの密室を、らいちが解く。

タイトルや二匹の蛇の夢などから蛇が絡むのは見え見えだったが、二番目の事件は全く面白くない。ところが一番目の事件の真相は、誰も考え無さそうな内容。現実には有り得ないだろうが、よくこんなバカバカしいトリックを考え付いたものだと、呆れる。SFでもない限り、前代未聞な内容であることに間違いはない。通常なら苦笑するところだが、本作の場合は失笑という内容だろう。

どうでもいいが、弁護士に見解を聞くのなら、もっと他に触れることはあるだろうとは言いたい。もっともわざと伏せたのかもしれないが。

前代未聞のトリックではあるが、物語自体は退屈で苦痛。最後の方でアクションシーンが出てくるのも突発的であり、わざとらしい。小説としては、過去のらいちシリーズと比べて、一番つまらないだろう。それを補っているのがあのトリックだが、受け入れるかどうかは読者次第。多分、受け入れられない、と思う読者の方が多いだろう。

まあ、こんなトリックもあるのだ、という意味では覚えていてもいい作品ではあるが、それ以上のものはない。さて、次はどの方向性に進むのだろうか。いい加減、ストレートな作品も読んでみたいところだが。いつまでもこんな作風は続かないだろうし。