平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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本岡類『花の罠―大和路・萩の寺に消えた女』(祥伝社 ノン・ノベル)

花の罠―大和路・萩の寺に消えた女 (ノン・ノベル)

花の罠―大和路・萩の寺に消えた女 (ノン・ノベル)

萩の花咲き誇る奈良・白毫寺で女流将棋名人御影真理子が誘拐され、五千万円を要求する女の声の電話が。将棋連盟は身代金受渡し役として水無瀬翔五段を派遣、しかし警察の失態で犯人は首尾よく現金を奪取し、闇に消えた。困惑の水無瀬と捜査陣に、やがて真理子発見の朗報が入った。だが、その監禁現場には、誘拐犯らしき女の刺殺体と真理子の指紋の付着したナイフが…。一転して殺人容疑者となった女流名人。はたして事件の真相は?古都を舞台に仰天の最新トリックを駆使した本格推理の傑作。(粗筋紹介より引用)

1997年刊行、書き下ろし。



『奥羽路 七冠王の殺人』(祥伝社 ノン・ノベル)で登場した水無瀬翔五段シリーズの第二作(続編があるとは知らなかった)。今回は女流名人が誘拐され、しかも殺人の容疑者となってしまうという衝撃の展開が続く。前作に引き続き将棋界を舞台とすることにより、探偵役である水無瀬を自然に登場させるようにしているのはさすがというか。将棋ファンである著者なので将棋界についての記述は確かだし、プロ棋士の読みの力を推理に生かそうとするところはなかなかうまいと思う。ただ、後半からのやや強引な捜査展開と、綱渡りのアリバイトリックはちょっと興醒めか。

将棋ファンでなくてもそれなりに楽しめるとは思うが、将棋ファンが登場人物のモデルを想像するのもまた一興。御影真理子女流名人は清水市代で、青山桜女流初段は高橋和かな。水無瀬は今ひとつわからない。探偵小説好きで、実力があるのに下のクラスでくすぶっているところは先崎学かなと思ったが。読んでも時間を損しなかった、という程度には面白かった。