平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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月村了衛『機龍警察』(ハヤカワ文庫JA)

大量破壊兵器の衰退に伴い台頭した近接戦闘兵器体系・機甲兵装。『龍機兵(ドラグーン)』と呼ばれる新型機を導入した警視庁特捜部は、その搭乗要員として姿(すがた)俊之(としゆき)ら3人の傭兵と契約した。閉鎖的な警察組織内に大きな軋轢をもたらした彼らは、密造機甲兵装による立て篭もり事件の現場で、SATと激しく対立する。だが、事件の背後には想像を絶する巨大な闇が広がっていた……“至近未来”警察小説を描く実力派脚本家の小説デビュー作!(粗筋紹介より引用)

2010年3月、書き下ろし刊行。



人気脚本家によるデビュー作。話題になっているのは知っていたけれど、どちらかといえばSFよりっぽく見えたので、なんとなく手に取るのをひかえていたが、別作が面白かったので、読んでみることにした。

舞台は近未来で、警視庁特捜部SIPD(Special Investigators, Police Dragoon)に装備された新型機「龍機兵」をめぐる争いが中心。もっとも、機甲兵装同士の闘いよりも、取り巻く人物や事件の捜査の方が中心となっている。

搭乗員である姿俊之、ユーリ・オズノフ、ライザ・ラードナー。特捜部部長で元外務官僚でもある沖津旬一郎。理事官である城木貴彦と宮近浩二。特捜部捜査主任である由起谷志郎と夏川大悟。特捜部技術主任である鈴石緑。主要登場人物は一癖も二癖もある人物ばかりかと思ったら、意外とストレートな人物もいる。多種多様な人物を配置し、警視庁ばかりでなく、警察庁などの複雑な人間関係も見どころ。

どことなく『機動警察パトレイバー』に似ているな(といっても、漫画、アニメのどちらも見ていない)などと勝手に思いながら読んでいたが、近未来という舞台や、SIPDという特殊な組織、そして機甲兵装があることを除いたら、警察小説になっていることに驚き。組織同士の争いや駆け引きなど、ドロドロした部分は読み応え十分。

アニメを中心とした脚本で人気を馳せていたからか、どことなくアニメっぽさが感じられたし、最後の方は駆け足になっている点は気になったけれど、デビュー作なら合格点が付く出来だろう。次作に続くであろうという引きも悪くない。