平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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似鳥鶏『さよならの次にくる 』(創元推理文庫)

さよならの次にくる<新学期編> (創元推理文庫)

さよならの次にくる<新学期編> (創元推理文庫)

名探偵の伊神さんは卒業、葉山君は二年に進級、そして迎えた新学期。曲がり角で衝突したことがきっかけで、可愛い一年女子の佐藤さんと知り合った。入学以来、怪しい男に後をつけられているという佐藤さんのために、葉山君は柳瀬さん以下演劇部有志の力を借りてストーカー撃退に奔走することになる……。第五話「ハムスターの騎士」ほか、職員室から鍵を盗み出す役目を押し付けられる羽目になった葉山君の悪戦苦闘を描く「ミッションS」などを収録。山あり谷ありの学園探偵ライフを満喫(?)する葉山君は、やがてある意外な事実を知ることに……爽快なフィナーレまで一気呵成に突き進む、コミカルな学園ミステリ、後編。(粗筋紹介より引用)

2009年8月、文庫書下ろし。



粗筋紹介にある通り、演劇部とストーカー撃退作戦を繰り広げる「第五話 ハムスターの騎士」。トリック自体はすぐに予想ついたが、曲がり角で美少女とぶつかるという超古典的シチュエーションの方に萌えた(笑)。

「第六話 ミッションS」は、モザイク消しの処理をしていたエロDVDを回収するために、職員室にあるシステム管理室の鍵をすり替える依頼を受けた葉山君の悪戦苦闘が描かれる。真相や動機が高校生らしいなと思いつつ、葉山君ってよほどの巻き込まれ体質なんだと妙に感心。

「第七話 春の日の不審な彼女」は、演劇部の出張公演に荷物持ちとしてつき合わされた葉山君が宿屋の自室で目を覚ますと、首のもげたマネキン人形がテーブルの上にあったという話。ドアも窓も鍵がかかっている、という密室のシチュエーション。トリックなどは簡単なものだが、どうしても葉山君と柳瀬さんと佐藤さんの三角関係?の方に目を取られがちで、あまり気にならない。上下二巻本のクライマックスとしてはなかなかの盛り上がりである。

「第八話 And I'd give the world」は、本編全体に隠されていた謎が明かされる話。なんだかんだ言っても、葉山君が物語の主人公なんだと思わせる。

「第九話 「よろしく」」はエピローグ。しっかり続編も書けますよ的な終わり方という気もするが、収まるところに収まるのは読んでいて気持ちいい。

まあ、ラノベだなと言ってしまえばそれまでだが、一創元推理文庫から出ているだけの仕掛けが一応はあることも事実。ベタとはいえラブコメもあるし、謎解きもある。何も無理して上下巻に分けなくても、という気はする。いやむしろ、一巻本にすべきじゃなかったか、これは。上巻のいくつかの話はいらないという気もするし。

下巻を読んで、もう少し付き合ってみてもいい、という気になってきた。まあ実際にはあと4冊ぐらい出ているわけだが。