- 作者: 有栖川有栖
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2017/01/28
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (10件) を見る
『文芸カドカワ』2016年5月号〜2017年1月号連載。加筆修正のうえ、2017年1月、単行本刊行。
火村英生シリーズ長編。結果的にクローズド・サークルものに近くなった状況下において、本格ミステリならではのロジックが楽しめる作品。せっかくの「悪夢」「狩人」というキーワードがうまく生かされてなかったのは残念だが、なぜ手首が斬られていたかという推理は圧巻。さすが有栖川、と言っていいだろう。犯人と動機にもう少し意外性があるとよかったのだが、それは無いものねだりか。事情を話せば殺人を犯さなくても相手は分かってくれたんじゃないか、という気がしなくもないが。
ファンからしたら「俺が撃つのは人間だけだ」「あなたにとっては喧嘩かもしれませんが、私にとっては“狩り”です」といった火村の言葉に騒ぐのだろうなと思ってしまう。有栖川の巧いところは、さり気なく殺し文句を用意しているところという気がしてきた。
連載のせいかもしれないが、前半部分が少々長い。キャラクター小説の部分も大事にしているからだろう。とはいえ、もうちょっと削ることができれば、もっとすっきりとした仕上がりになったに違いない。それはそれとして、面白かった本格ミステリ、と言っていい。本格ミステリの安定した面白さを作り出す、という部分では随一だと思う。